胚発生の観察については、前年度に引き続き購入したシマヘビから得た受精卵を段階的に固定し胚標本を得た、これらの標本の内、後期発生段階にあるものについて、ルゴール溶液を用いた軟組織コントラスト強化CTスキャン撮影を行い、ムラの出ない染色法や、特に筋ー神経系を明確に観察するための染色時間を検討した。またそのような観察の結果、これまで古典的な解剖学的観察により報告されていた、第十一脳神経の欠如を確認した。その結果をもとに、器官の退化(この場合頸部と肩帯)にともなう神経支配の進化変化について考察を行った。さらに野生ニホンヤモリの受精卵の採取とその胚標本の作製を行うとともに、生体については繁殖時期を考慮した採取を行うことで、研究に使用できる十分な数の胚を得るストラテジーを考案した。さらに鳥類について、エミュー(古顎類)、ウズラ(新顎類)の受精卵を孵卵しその胚標本を作製する一方で、全者についてはコントラスト強化CTスキャン撮影により骨格や各器官系位置関係のデータを得た。また四肢動物の現生種の外群としてアフリカハイギョやアミアの解剖をおこなうとともに、ダチョウ1体丸ごとのCT撮影を行うなどして、同様な器官間の位置関係のデータを取得した。一方で、予定していた海外における化石標本観察は実行できなかったため、ディキノドン類や魚竜類など国内の博物館に収蔵されている爬虫類化石標本の後頭部や頸椎の観察を行い、これらのデータを含めた進化的変化の考察を行った。
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