研究課題
本研究は、単細胞真核生物・有孔虫のバイオミネラリゼーションの分子機構を明らかにすることを目的としている。石灰質の生体鉱物によって殻を形成する有孔虫は、海洋に広く分布し高いバイオマスを持つため、二酸化炭素の消費・固定に大いに貢献し、海洋の物質循環に深く関わっている。さらに、有孔虫は周辺海水中の多様な溶存イオンを取り込んで殻を形成し、殻が微化石として保存されることから、古海洋環境や層序の指標として重要な役割を果たす。このように、有孔虫の石灰化作用は、地球環境に深く関わり、古生物学・古海洋学の枢要であるにも関わらず、その分子機構は不明であった。そこで本研究では有孔虫が細胞成長とともに殻を形成する特徴に着目し、発現遺伝子を比較することによって、石灰化に関連する遺伝子群を同定した。底生有孔虫を用い、殻形成・非形成時の個体、各々からRNAを抽出した。抽出産物を用いて比較トランスクリプーム解析を行い、約67Mのペアエンドリードのde novo解析から、殻形成時に有意に高い発現をする遺伝子を同定した。その結果、細胞成長に即して、細胞骨格やエネルギー生成を担うミトコンドリア関連遺伝子の高発現を検出した。カルシウムイオンの細胞外からの取り込み、細胞内での小胞体中への貯蔵とミトコンドリアへの供給に関する遺伝子の高発現も認められた。過多のカルシウムイオンは細胞死などを招くが、細胞外への排出を担うイオンチャネル遺伝子も検出された。これが殻形成場へのカルシウムイオンの供給源になると考えられる。さらに、重炭酸イオンを代謝する炭酸脱水素酵素や細胞外へ排出するイオンチャネル遺伝子の発現も検出された。このように、細胞成長に伴い、細胞を介してのカルシウムイオンの取り込み/排出と重炭酸イオンの代謝/排出が、有孔虫の炭酸塩殻の形成に有効であることが示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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