研究課題
研究2年目にあたり,昨年度から実施してきたメコンデルタの河口部を対象に,河川・海洋遷移帯の観点からエスチュアリーの地形と堆積物の解析を行った.ベトナムにおいて既に取得していた河川地形データと河床から採取した堆積物を解析を行った.これらの解析の結果,メコンデルタの河床地形や堆積物は,上流側と下流側で大きな違いがあり,河川地形では,川幅が一定で,下流に向かって水深が深くなり,河川の蛇行度が大きな上流部と,川幅が下流に向かって広く,また水深が浅くなり,蛇行度が小さく直線的な下流部に大別された.堆積物では礫を含み,泥分をほとんど含まない砂からなる上流部と,砂泥細互層からなり細粒な堆積物が卓越する下流部に分けられた.これらの特徴は,上流側が河川卓越の環境であるのに対し,下流側は潮汐卓越の環境であることを示している.これらの結果は,国際誌のSedimentologyから,2019年1月に出版された.これらの堆積物に含まれていた泥の偽礫の特徴を取りまとめて,国際学術誌のJournal of Sedimentary Researchから,2018年9月に出版した.ベトナムのドンナイ川における河床調査と,メコンデルタのバーライ放棄河道におけるボーリング調査を2018年度に実施した.これらの解析は,2019年度に実施の予定である.この他に同様な潮汐卓越型の大河川である長江デルタのエスチュアリーについて,地球化学的な特徴をとりまとめてMarine Geology に投稿した.またメコンデルタで明らかになった潮汐卓越型の大規模デルタにおける河床地形の特徴について,ガンジス・ブラマプトラデルタ,長江デルタ,イラワジデルタ,フライデルタにおいて,同様の解析を行い,これらすべてについて同様の特徴があることを見出した.これらの結果については,Earth-Science Reviewsに投稿し,受理された.
1: 当初の計画以上に進展している
メコンデルタで明らかになった特徴を世界を代表するガンジス・ブラマプトラデルタ,長江デルタ,イラワジデルタ,フライデルタに適用した結果,同様の特徴を見出し,潮汐卓越型のデルタの下流部における特徴であることが判明した.この結果は,当該分野において最も権威ある学術誌のEarth-Science Reviewsに投稿し,受理された.この副産物とも言える成果が,大きなものであったことから,当初の計画以上に進捗しているとした.
2018年度に現地調査を実施した,メコンデルタのバーライ放棄河道充填堆積物のボーリング調査のデータ,ドンナイ川で実施した河床堆積物と河床地形調査のデータについては2019年度に解析の予定である.またメコンデルタで明らかになってきた河口部であるエスチュアリーの特徴については,長江デルタほかのデルタにおいて,同様な特徴があるのかどうか,更なる一般的な特徴の解明を目指して,研究を拡大してゆく予定である.
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 6件)
Sedimentology
巻: 66 ページ: 146-164
10.1111/sed.12489
Journal of Sedimentary Research
巻: 88 ページ: 981-990
10.2110/jsr.2018.54
Earth-Science Reviews
巻: 185 ページ: 938-955
10.1016/j.earscirev.2018.08.012