研究実績の概要 |
本研究では、高圧科学において圧力標準物質として広く利用されている物質群の状態方程式について、地球中心圧力(365万気圧)を超えるような極高圧領域における相互の整合性を評価し、この領域に適用可能な内部整合圧力スケール群を確立することを目的としている。コロナ禍の影響で予算の一部が繰越となった令和3年度においては、放射光施設におけるMgOとWを試料とした加圧実験と、(同じくコロナ禍で延期されていた)国際会議での成果発表を行った。 MgOとWの加圧実験では、本研究で開発を進めてきた凸型の先端形状を持つ特殊なダイヤモンドアンビルを集束イオンビーム加工装置により作成して用いた。アンビルの先端径は16 umである。実験の最高圧力は、Dewaele et al. (2004)のWスケールでは383 万気圧となり、一方Tange et al. (2009)に基づくMgOスケールでは360 万気圧となった。これらのスケールはこの圧力領域において6%程度の違いがあることが分かる。 絶対圧力スケールとして最近報告されたCuおよびAu, Ptのランプ圧縮実験にもとづく新しい圧力スケール(Fratanduono et al., 2020; 2021)について、本研究でこれまで蓄積してきたMgO-Pt-Re-Cu-W-Au-Moといった各種圧力スケール物質の高圧下における体積-体積関係をもとにその相互の整合性について検証を行うことができる。この結果、500 GPa領域においてCuとAuはおおよそ近い圧力を示すものの、Ptは5%程度高い圧力を示している可能性が示唆された。その他各種物質との相互関係に関する詳細な解析・検証は今後さらに進めていく予定である。
|