研究課題
1.通常の炭化タングステンアンビルよりコバルト含有量の少ない、複数の種類の高硬度超硬合金アンビルを使用し、マルチアンビル高圧発生装置を用いて高温高圧実験を行った。その結果、一種類の超硬合金アンビルでは、約35GPaまでの圧力と約1800℃までの温度を発生させることが可能になった。2.MgCr2O4-Mg2SiO4系の高圧相関係を解明する目的で、MgCr2O4:Mg2SiO4が1:1の組成について、1600℃で25GPaまでの相関係を決定し、組成分析を行い、それに基づいて密度を求め、圧力の増加に伴って段階的に進行する相転移の系列を明らかにした。特に、深さ約400㎞に対応する圧力でMg2SiO4オリビンとMgCr2O4クロマイトの間で反応関係があることが明示された。それらに基づき、「超高圧クロミタイトのマントル循環説」で唱えられている「超高圧クロミタイト」は、深さ約400㎞より浅所を循環したと考察した。3.MgCr2O4-Mg2SiO4系の高圧相の一つとして出現する変型ludwigite型Mg2Cr2O5高圧相の単結晶を合成し、結晶構造解析を行った。4.地殻、マントルにおいて放射性元素U、Thのホスト鉱物であるZrSiO4ジルコンの高圧相関係を明らかにする目的で、ジルコン、その高圧相のレイダイトなどのエンタルピー測定、低温熱容量測定を行い、熱力学計算により高圧相平衡関係を決定した。また、室温での静的圧縮実験や衝撃圧縮実験によるジルコン-レイダイト相転移の圧力と、熱力学計算による転移圧の違いを考察した。5.MgO-SiO2系の高圧相の内、従来研究が乏しかったMg14Si5O24無水B相の低温熱容量測定を行い、高圧相平衡実験の結果と組み合わせて、平均的マントルよりもMgに富む地域における無水B相の安定領域を詳細に決定した。
2: おおむね順調に進展している
MgCr2O4-Mg2SiO4系の高圧相関係の内、オリビンとクロマイトの反応関係を明らかにしたことや、Mg14Si5O24無水B相の安定領域を確定したことなどは重要な進展である。
平成29年度に開発した技術を活用し、MgCr2O4-Mg2SiO4系の広い組成範囲でのさらに詳細な高圧相関係や、CaSiO3ペロブスカイトに関わる高圧相関係を調べる。また、カルシウムフェライト相をはじめとするポストスピネル型高圧相に関して、様々な組成のAB2O4化合物の高圧相転移を明らかにする。
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