研究課題/領域番号 |
17H02988
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
力石 嘉人 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50455490)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | アミノ酸 / 安定同位体比 / 食物連鎖 / エネルギー / 起源 / 物質循環 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,アミノ酸の安定炭素・窒素同位体比を,従来の約1/1000の量に相当するピコ(10の-12乗)モルレベルで測定する技術を開発し,試料に含まれるアミノ酸が微量,または,試料自体が微小であるために分析が困難であった(1) 生物から単離したタンパク質やオルガネラ,(2) 難培養性微生物,(3 )地質時代の生物化石,(4) 隕石やサンプルリターン計画によりもたらされる地球外物質などで,アミノ酸の安定同位体比測定を可能にすることである。 平成29年度は,4年間の研究の第1段階として,アミノ酸の同位体比測定に用いる機器(ガスクロマトグラフ-同位体比質量分析計:GC-IRMS)について,(1) 反応炉やトラップなどの各接続部のユニオンを再設計し,測定機器内へ流入する大気の徹底的な排除を行った,また,(2) ロジウム,パラジウム,白金,及びその合金などの金属触媒を用いた新しい反応系を構築し,酸化・還元炉の高性能化を実施し,「S/N比向上」を行った。 これらの結果,通常のGC/IRMSでは,経路を出来るだけシンプルなものに変更し,また,各接続部のユニオンを,フェラルの斜側面がすり鉢状のユニオンに接するように再設計し,接地面積の最大化を図ることで,10-50mV程度存在するノイズ(S/NのN)を,0.5-1.0mVまで減少させることに成功した。さらに,パラジウム触媒を用いることで,酸化炉の能力を約1.5倍に,ロジウム触媒をもちいることで,還元炉の能力を約7-8倍向上させることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は,アミノ酸の同位体比測定に用いる機器(ガスクロマトグラフ-同位体比質量分析計:GC-IRMS)の「S/N比向上」を計画し,研究が最も順調に進んだ場合には,「測定機器内へ流入する大気の排除」で最大10倍,「酸化・還元炉の大幅な能力向上」で最大10倍の計100倍の感度向上を見込んでいた。 これらの予想に対して,平成29年度の研究を終えた時点で,「測定機器内へ流入する大気の排除」で約20-50倍の著しい感度向上が得られたが,「酸化・還元炉の大幅な能力向上」では,酸化炉でわずか約1.5倍,還元炉で約7-8倍の感度の向上にとどまっている。これらは(とくに,酸化炉に関しては),平成30年度以降も,さらなる検討を続けていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,平成29年度に検討が不足しているGC/IRMSの「酸化炉」の能力向上を引き続き進める。それに加えて,平成29年度に新たに導入したGCを用いて,GC条件の最適化(GCカラムの選択や,経路の再設計,キャリアーガスの流速の調整)を1つ1つ丁寧に進め,平成31年度までには,従来のGC/IRMSに対して約20倍の感度の達成を目指す。 また,平成30・31年度には,開発した技術の正確な評価を目的に実施する応用研究(とくに当該分野の研究を牽引し,かつ,将来の研究展開のモデルとなるような萌芽的研究)に向けて,連携研究者・研究協力者との議論の実施,および,試料の入手を行う(実験室での生体試料の培養・飼育を開始,環境試料の採取計画の作成,実施など)。現時点では,試料としては,(1)生物から単離したタンパク質,(2)葉緑体やミトコンドリアなどの細胞内オルガネラ,(3)海洋や海底下から採取された難培養性微生物,(4)地質時代の生物化石,(5)隕石や宇宙空間を模したモデル実験で得られたアミノ酸,(6)海洋堆積物(メタンハイドレート生成層前後)を計画している。
|