研究課題/領域番号 |
17H02995
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
篠原 俊二郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 卓越教授 (10134446)
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研究分担者 |
大西 直文 東北大学, 工学研究科, 教授 (20333859)
桑原 大介 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60645688)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プラズマ / ヘリコン波 / 無電極 / 加速 |
研究実績の概要 |
電気推進は化学推進と比べ比推力(排出速度に比例)が高く、将来の全電化衛星・惑星軌道間輸送用など、プラズマを用いた電気推進ロケット開発は今後の喫緊の課題である。「はやぶさ」を超える長寿命化と大電力化で行う木星以遠の深宇宙探査も含め、この開発は大きな挑戦と言える。プラズマと電極が直接接しない無電極推進法の確立では長寿命となるため、従来の方法での短所がなくなり非常に有望である。ここでは、新提案しているヘリコン高密度プラズマ生成と革新的電磁加速を全て無電極で行い、その物理現象解析を先進診断と理論・シミュレーションを駆使して行い、新たな知見と最適化によりプロトタイプモデルの構築を目指す。 本年度は初年度にあたり、ヘリコン高密度プラズマ生成と電磁加速・解析用の装置・コード整備、及び初期研究を行った。 1) 高密度ヘリコンプラズマ生成に関しては、LMD装置で加速のためのパラメータサーベイを行った。更に、新方法のガス供給(パイプによる内部供給と超音速ガス供給、圧力測定用のピラニーゲージ開発)のテストを行った。SHD装置では、従来よりも高い周波数印加より、世界最小を更新する3 mm及び1 mm直径のプラズマ生成にも成功した。 2) 高密度ヘリコンプラズマの無電極電磁加速では、a) 回転磁場(RMF)加速による電磁場の時空間測定、b) m = 0半周期加速の基礎実験を行った。またそれらの電源を増強した。 3) 先進診断では、2次元駆動機構でのプローブ測定、絶対密度測定用のマイクロ波干渉計、レーザー誘起蛍光法、衝突輻射モデルの開発、トモグラフィ分光計測を進めた。 4) シミュレーションに関しては、プラズマ-電磁場相互作用を記述するプラズマ流体コードの構築を行った。これより、本提案のローレンツ力が電子のみを加速した場合でも、加速された電子が電場を形成することでイオンも同方向で加速されることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに発注した高電力化の高周波電源は新設計のため、メーカーの問題でトラブルがあったにも関わらず、予定通り順調(多くは予定以上)に進めることができた。 すなわち、研究実績の概要にあるように、研究テーマの主要部分である、無電極によるプラズマ生成と加速(幅広い領域での高密度プラズマ生成、加速機構の物理評価)、種々の先進プラズマ診断、及びシミュレーションコード開発の研究は、非常に順調に進めることができた。 なお、これらの成果により、研究論文10編(本研究を反映したレビュー論文も含む)、発表37件を行うことができた(更に、卒業論文4編、修士論文2編にも貢献)。
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今後の研究の推進方策 |
無電極プラズマ生成に関しては、更なるターゲットプラズマの探索と、種々のサイズ(特に極端小半径のmmサイズ)の高効率のプラズマ生成を目指す。新たな2つの中性ガス注入法も進めていく。 提案している無電極プラズマ加速については、回転磁場(RMF)加速とm=0電磁加速を更に進める。前者の加速では誘起磁場の時空間分布測定から、周方向電流分布導出を目指す。後者の加速では外部パラメータのスキャンと、密度、速度の時空間変化を求め、本手法の有効性を調べる。 先進的診断とプラズマ放電の改良に関しては以下である。前者では衝突輻射モデルを改良してプローブ測定と比較する。レーザー誘起蛍光法ではスラスト特性を評価すると共に、磁場とイオン流速方向を求め、デタッチ面についても探る。トモグラフィーの手法を用いた高速度カメラによる時空間変化測定も、衝突輻射モデルも援用して進める。 シミュレーションに関しては、コード開発を更に進め(軸対称1次元から2次元へ)、実験(特にm=0加速)の結果との比較を試みる。
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備考 |
研究室のFBにも一部あり:https://www.facebook.com/shinoharalab/
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