研究課題/領域番号 |
17H02996
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
重森 啓介 大阪大学, レーザー科学研究所, 教授 (50335395)
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研究分担者 |
境家 達弘 大阪大学, 理学研究科, 助教 (60452421)
尾崎 典雅 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70432515)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高エネルギー密度 / 超高圧力 / 高速電子 / 衝撃波 |
研究実績の概要 |
今年度はギガバール圧力発生のための手法のうち,高速電子に着目した圧力増強に関する研究を重点的にすすめた.高強度レーザー照射によって発生するアブレーション圧力に関しては,その吸収強度に比例しレーザー波長に反比例するが,ある照射強度以上になるとレーザー・プラズマ不安定性により吸収率が低下し,圧力が頭打ちになる.この壁を乗り越えるために,このレーザー・プラズマ不安定性等によって発生する高速電子を逆に利用し,高圧力発生にどのように寄与するのかを実験的にもとめた. 実験では,パルス幅300 psのレーザー光をCH-Cu-Quartzの3層ターゲットに照射し,発生する高速電子のパラメータ(高速電子のスペクトル,Cu層での吸収分布)などを測定するとともに,試料中を伝播する衝撃波のパラメータを光学計測によって得た.高速電子の影響を系統的に得るため,レーザーの波長および照射強度を変化させてデータを取得した.また,高速電子の効果を積極的に引き出すため,照射パルスの前にプリパルスを照射し,発生する高速電子と衝撃波パラメータの比較を行った. 実験結果より,これまでの先行研究と同様に高速電子の発生量・温度ともにレーザーの照射強度に比例し波長に反比例する傾向が現れた.また,高速電子による先行加熱の影響も定性的理解と一致した.一方でプリパルスを照射した場合,高速電子の発生量や衝撃波圧力の差が,プリパルスが無い場合と顕著な数値として現れた.発生圧力はプリパルス無しと比較して2倍程度まで上昇した条件もあり,引き続き解析をすすめている段階である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度において,当初計画していた超高圧力発生法の一つである高速電子駆動による圧力アシストに関する研究を行い,種々のレーザー波長,照射強度において生成する衝撃波圧力の評価を行った.また,照射パルスの前にプリパルスを付加することにより,高速電子の発生量が増加するとともに発生圧力も増大するという結果が得られた.これらの項目は平成30年度を目安に行っていたが,やや早めに研究が進行している. また,新しい高圧力の発生手段として,超高強度レーザーを用いる方式を検討し,平成30年度に実施をするべく準備を整えている.この方式は当初の計画では挙げられていなかったが,X線自由電子レーザーSACLAに併設される500 TWレーザーの稼働が開始したため,これに応募し2018A期での使用が認められたため,ナノワイヤー試料を用いたギガバール圧力発生を初めて試みる. 一方で収束衝撃波型の高圧発生法に関してはターゲット製作の遅れとマシンタイムの関係で実施ができなかったが,平成30年度中には結果が出る見通してあり,総じて計画通りに研究が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,平成29年度に実施した高速電子駆動による高圧力発生法に加えて,超高強度レーザーによる超高圧力(超高エネルギー密度)条件の生成に関する研究を行う.大阪大学レーザー科学研究所のLFEXレーザーにおいて,ピコ秒パルス照射時の衝撃波加熱条件の計測を行うほか,理研播磨の500 TWレーザーとX線自由電子レーザーSACLAを用いたナノワイヤー試料による実験を開始する. これらの実験的研究とともに,多次元シミュレーションによる実験結果の解析,および詳細な物理パラメータの考察を行う.これまでの研究において,高圧力発生に高速電子の影響が顕著なことは疑いの余地が無いが,既存のシミュレーション計算では発生する電子の量を過大に見積もっている恐れが指摘されている.この矛盾を明らかにするため,実験においてはレーザープラズマ不安定性による後方散乱光の計測を新たに実施するほか,実験で得られる高速電子のスペクトル計測データの絶対較正を行い,高速電子の変換効率などの定量的な評価を行うことにより,シミュレーション計算の高精度化を狙う.
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