研究課題/領域番号 |
17H03000
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
荒巻 光利 日本大学, 生産工学部, 教授 (50335072)
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研究分担者 |
北野 勝久 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (20379118)
吉村 信次 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (50311204)
寺坂 健一郎 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (50597127)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光渦 / プラズマ分光 / ドップラー分光 |
研究実績の概要 |
光渦は3次元的にねじれた位相構造を持つ電磁波であるため,その光波中を運動する粒子は3次元のドップラー効果を受ける.本研究では,光渦レーザーの特異な空間位相構造をプラズマ分光に利用することで,レーザーを横切る方向の運動に感度を持つ光渦ドップラー分光法を開発し,プラズマ中の流れ計測に応用することを目的としている.これまでの光渦ドップラー分光法の開発過程において,ビーム内に吸収率が負になる領域が観測されることが問題になっていた.光渦吸収分光ではビーム断面におけるドップラーシフトの位置依存性を利用するため,必然的に局所的な吸収による欠陥構造を観測する必要が出てくる.欠陥構造を持つ光渦の伝播に関する光学分野の先行研究において,伝播に伴うGouy位相変化で欠陥構造が回転することが報告されている.同様の効果が光渦の吸収分光に与える影響について数値計算を行い,伝播による吸収率分布の変形を確認した.伝播による吸収率分布の変形を避けるため新たに4f光学系を開発して測定系に導入することで,理論的な予想に近い吸収率分布が得られ,負の吸収率も観測されなくなった.これにより,これまで問題となっていた負の吸収率がGouy位相変化によって作り出されていたものであることが明らかとなった.測定系の改良に加え,光渦とフーリエ光学を組み合わせた生かした新たな試みとして,吸収によって生成される高次の空間構造のみを取り出すことにより,吸収分光の感度を格段に向上させる方法に関する理論解析も進めている.また,光渦LIF法の予備実験を行うとともに,受光系に求められる空間分解能等の検討を行った.大気圧ヘリウムプラズマジェットへの応用では,予備実験として1083nmのDFBレーザーを用いた通常の吸収分光法により,Heガス中を伝播するプラズマビュレットを観測し,その伝播特性を調べた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光渦分光法を確立するため,実験系の改善とともに,新たな応用に向けた理論解析等を着実に進めている.測定系に4f光学系を導入したことで吸収率分布の変形を抑えられることが明らかとなった.一方で,方位角ドップラーシフトの大きさが理論的な予想に対して数倍の大きさになっている原因については明らかになっておらず,その原因の解明が課題となっている.光渦の特徴を生かした吸収分光法の高感度化という新しい試みに加え,光渦LIF法の開発,大気圧プラズマジェットへの応用等を順調に進めている.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は,欠陥のある光渦の伝播解析,フーリエマスク光渦吸収分光法の開発,光渦LIF法の開発,および大気圧プラズマジェット中の準安定原子計測への応用を進める. 「欠陥のある光渦の伝播解析」2018年度に4f光学系を開発して測定系に導入することで,Gouy位相変化が吸収率分布に影響を及ぼすことが実験的に明らかになった.2019年度は数値計算により,欠陥のある光渦の伝播に伴う変形を詳細に検討する. 「フーリエマスク光渦吸収分光法の開発」光渦吸収分光ではドップラーシフトの位置依存性により必然的に不均一な強度分布が得られる.このことは吸収によって高次の空間周波数成分が生成されたことを意味している.2018年度に,この高次の成分のみを取り出すことによって従来の吸収分光法の感度を格段に向上できる可能性を数値解析によって示した.2019年度は,この新しい光渦吸収分光法の測定系を構築し,予備実験を開始する. 「光渦LIF法の開発」光渦LIF法では,ビーム断面内の位相特異点近傍から放出されるLIF信号の2次元分布が重要となるため,LIF信号を高空間分解で画像計測する必要がある.2018年度に予備実験を行うとともに,受光系に求められる空間分解能等の検討を行っている.2019年度は,高空間分解能な受光系を構築する. 「大気圧プラズマジェット中の準安定原子計測への応用」本研究課題で開発した光渦収分光法を適用することで,準安定原子の放電に沿った輸送を観測する.
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