研究課題/領域番号 |
17H03002
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
永岡 賢一 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (20353443)
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研究分担者 |
高橋 和貴 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80451491)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 負イオンビーム / ビーム光学 / ビーム位相空間構造 / ビーム引き出し界面 |
研究実績の概要 |
負イオンビームは、高エネルギー領域でも電荷交換反応が利用できるため、核融合研究、素粒子原子核実験、医療用加速器など現在の最先端科学技術を支える重要な技術であり、その高性能化は急務の課題である。近年、負イオンビーム生成には、『イオン性ペアイオンプラズマ』と呼ばれる特異なプラズマの寄与の重要性が示されたが、その電磁場への応答など基本的性質はほとんど解明されていない。本研究では、ペアプラズマから負イオンビームが引き出される界面に積極的に擾乱を加え、ビーム引出界面の電場応答特性を実験的に明らかにする。この実験から得られるビーム引出界面を決めるパラメータ依存性に基づく理論モデルの構築と、それを用いたビーム引出電極構造の最適化により負イオンビームの飛躍的高性能化が本研究の目的である。 本研究では、負イオンビームの位相空間構造の評価、およびビーム発散角の時間変動の評価を実験的に行うことにより、ビーム光学特性を決定する物理パラメータの抽出をおこなった。これまでのシングルガウスビーム近似に基づく発散角の評価では、ビーム光学特性の性質は表現できず、ビームの垂直方向速度分布の広がり、マルチビーム光軸のずれ、イオン源プラズマに起因する発散角の時間振動振幅が非常に重要なパラメータであることを実験的に明らかにしてきた。これらのパラメータを比較することで、負イオンビーム加速器の具体的な最適化の指針が得られることが特に重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ビーム引出界面の電場応答特性を実験的に明らかにするための実験が準備中であり実施できていない点が、多少遅れている点であるが、一方で、ビーム位相空間構造の実験的評価で、負イオンビーム光学特性を決める重要なパラメータの抽出に成功するなど、非常に大きな進展があった。本来、オプション的な位置づけであったビーム位相空間構造の研究で、成果が上がっている点は、計画以上の進展であり、全体としては、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、本研究計画の最終年度である。 まず、現在までに大きな進展があった負イオンビーム位相空間構造の実験評価により得られた成果を海外の主要な科学雑誌に報告するための準備を進める。インパクトファクター4以上を目指す。また、本研究性は、ITER用準定常RF負イオン源のビーム光学特性を改善するためにも有用なため、ITER用準定常RF負イオン源の開発を実施しているドイツのマックスプランクプラズマ物理研究所との共同研究へ発展している。 遅れていたビーム引出界面の電場応答特性の実験を2019年6月に実施する計画で実験装置の準備中であり、ビーム引き出し界面の動的挙動を観測する予定である。この実験を行うことで、負イオンビーム引き出し界面のモデル化が可能になる。最適化された電極の設計と実験実証は、2019年度の後半に予定されている。 本研究計画は、本年度で終了するが、これまでの成果に基づく国際共同研究が立ち上がっており、科研費の国際共同研究強化(B)にも採択され、一連の研究は、国際共同研究として、ITER用負イオン源開発にも貢献する計画に発展している。
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