研究課題/領域番号 |
17H03004
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
歸家 令果 首都大学東京, 理学研究科, 教授 (10401168)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 反応動力学 / 分子構造 / 電子回折法 / 強光子場科学 / 電子散乱 |
研究実績の概要 |
本研究では、分子の幾何学的構造の超高速時間発展を気体電子回折実験によって解明することを目的として、シングルサイクルテラヘルツ波の照射下で標的分子に高速電子を衝突させることによって、<10 fsの時間分解能で電子回折像を得ることができるテラヘルツ波アシステッド電子回折(THz-wave-assisted electron diffraction; TAED)法を開発する計画であった。このTAED法を実現するための散乱電子測定装置やテラヘルツ波発生光学系を開発するとともに、散乱電子信号分布の数値シミュレーション法を確立し、散乱電子信号分布から分子の幾何学的構造を決定する理論的な枠組みを構築するする計画である。そして、この手法を用いて、超短パルスレーザーによって光励起された分子の構造変化を<10 fsの時間分解能で追跡することを目標としていた。 本年度の成果としては、THz波発生に用いる非線形光学結晶であるリチウムニオブ酸結晶を液体窒素によって冷却し、発生したTHz波の再吸収を抑制することによって、高効率のTHz波発生光学系の構築する。液体窒素を導入して、結晶温度を測定したところ、十分に結晶を冷却できていることを確認した。また、テラヘルツ波発生のためのドライブパルスのスペクトルに歪みが生じており、その結果、ドライブパルスの時間波形にも顕著な歪みが生じていることを突き止めた。レーザーシステムの調整条件を精査した結果、ドライブパルスの波形歪みが生じない条件で実験を遂行することができるようになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TAES過程観測実験の準備を進めていく過程で、当初の想定に反し、テラヘルツ波発生のためのドライブパルスのスペクトルに歪みが生じており、その結果、ドライブパルスの時間波形にも顕著な歪みが生じていることが判明した。研究遂行上、このドライブパルスの歪みの解消が不可欠なため、ドライブパルス波形歪みの原因調査と対策を追加して実施する必要が生じ、進捗に遅れが生じた。現在、波形歪みの問題は解消されており、今後の研究は問題なく遂行できると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
レーザーアシステッド電子散乱観測装置を改修して、散乱点にテラヘルツ波を集光するとともに、散乱点でのテラヘルツ波の電場波形を計測できる電気光学サンプリング法の光学系を構築する。改修した観測装置を用いて、テラヘルツ波アシステッド電子散乱過程の初観測を目指す。
|