研究課題
2020年度は、前年度に新たに発見したアスガルドアーキアおよび海洋性微生物由来の内向きH+ポンプであるシゾロドプシン(SzR)について、より詳細な輸送メカニズムの解明のため、東京大学・大学院理学研究科・濡木研究室との共同研究により、X線結晶構造解析に取り組んだ。その結果アスガルドアーキア由来のSzRの一つ(SzR4)について、結晶を得ることに成功し、さらにそれを用いたX線結晶回折実験によって2.1オングストロームの分解能でSzR4の三次元構造を得ることに成功した。その結果SzR4の構造はバクテリオロドプシンなどのType-1型の微生物ロドプシンに近いことが明らかとなった。SzRは進化的にType-1型の微生物ロドプシンとヘリオロドプシンの中間に位置すると考えられているが、この構造の類似性からSzRもType-1型の微生物ロドプシンの1種であることが明らかとなった。またSzR4は膜貫通へリックスのうち3本(TM2、TM6およびTM7)の細胞質側が一般的な微生物ロドプシンと比べて短くなっていることが見出された。これまでの研究により、SzRは本研究課題のもう一つの研究対象で、別種の内向きH+ポンプであるPoXeRと異なり、レチナールから細胞質側の溶液へ直接H+が放出されることが示唆されていたが、今回のSzR4の構造はその原因が上記のへリックスの細胞質側が短く、H+アクセプターであるGlu81が細胞質側の溶媒に近いことにあることを示すものである。また構造情報と網羅的なアミノ酸変異体作製により、SzRのイオン輸送に重要な残基の大部分はTM3上に分布し、これらがイオン輸送経路を形成することが明らかとなった。SzRは長波長吸収型と、短波長吸収型の2種類があることが知られているが、主にSzR4のAsn100およびVal103の位置のアミノ酸の違いによりこの違いが生まれていることを示した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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