研究課題
本研究の最終年度として以下のような手法開発を中心とした研究を継続するとともに成果をまとめ発表した。(1)マイクロ流路などによる液体混合系への応用:改良したマイクロ流路(幅と深さが50μm)の試料セルを使って、光量が十分とれ、S/N比のよいデータが得られる軟X線ビームサイズ30μmの条件で、ピリジンと水の2液混合の窒素1s-π*吸収ピークの化学シフトの層流位置依存性を詳細に調べた。ビームサイズが30μmであっても空間分解能的には5μm以下の精度で化学シフトの変化を観測することができ、化学シフトの位置依存性からモル比率勾配を求めることに成功した。また、アセトニトリル水溶液の微小不均一性について炭素と窒素の内殻励起の実験研究及び理論研究を進め、局所構造を解明した。(2)経皮薬物輸送などの生体関連研究への応用:塗り薬などの薬剤に含まれている主薬成分分子が皮膚表皮の角質層を抜けて表皮下層領域から、真皮、皮下血管に至る経路を主薬成分分子の内殻吸収ピーク(主に酸素1s吸収ピークを利用)に注目してナノスケールで軟X線透過顕微鏡観察する研究を継続した。今回、フレネルゾーンプレートの改良により30nmスケールの分解能で明るい像を得ることに成功し、抗炎症薬分子のラパマイシンが角質細胞間の親油性角質層のみに存在し、相互作用により化学シフトを示すことを初めて観測することができた。また、脳血管腫症等につながるリソソーム内の貯蔵物質の解明などの問題にも本研究で開発した手法を応用した。(3)二次電池研究への応用:フレネルゾーンプレートを利用した軟X線透過顕微鏡は作動距離の制約により高エネルギーのX線に対応する手法となっているが、今回、リチウムイオン電池のリチウム元素等に対してナノスケール化学状態分析ができるようにゾーンプレートを改良し、真空紫外線の領域まで低エネルギー化することに成功した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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