研究課題/領域番号 |
17H03015
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岩本 武明 東北大学, 理学研究科, 教授 (70302081)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 不飽和ケイ素クラスター / ビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エン / ケイ素 / 異性化 / 付加反応 |
研究実績の概要 |
ケイ素-ケイ素二重結合周りの立体保護を軽減させたビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エン骨格を持つ不飽和ケイ素クラスター1の合成単離に成功した。X線単結晶構造解析の結果、合成した化合物の中心のケイ素骨格の特徴は、これまでに合成したより嵩高い立体保護基を持つ誘導体のものと類似していることを明らかにした。不飽和ケイ素クラスター1は四塩化炭素と速やかに反応し、環状及び鎖状の塩素付加体を与えた。詳細な反応条件の検討および捕捉実験の結果、不飽和ケイ素クラスター1のケイ素-ケイ素二重結合に塩素が1,2-付加することで生成するビシクロ[1.1.0]テトラシランが、テトラシラ-1,3-ジエンに異性化していることが推定された。この反応では副生成物でヘキサクロロエタンが生成していることから、二重結合ケイ素がラジカル的に四塩化炭素から塩素を引き抜いているものと推定された。同様なケイ素骨格異性化反応は不飽和ケイ素クラスター1とメタノールとの反応においても推定された。また、不飽和ケイ素クラスター1はジブロモメタンとも反応し、不飽和ケイ素クラスター1のケイ素-ケイ素二重結合部分にジブロモメタンが一分子付加した生成物を与えることを見出した。 また、不飽和ケイ素クラスターの骨格変換反応の計算化学的な反応経路解析を行い、Si8Me8の組成を持つ不飽和クラスターの特異な骨格異性化経路を見出した。求められた異性化経路では、4つのケイ素原子がメタセシス型の反応で骨格を組み替える素反応が複数組み合わさったものとして求められた。一見複雑に見える不飽和ケイ素クラスターの骨格変換反応が基本的な素反応の組み合わせで進行していることを示唆する結果を得た。 関連して、飽和ケイ素クラスターの過酸酸化により効率よくクラスター型シロキサンが収率よく生成することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的化合物である、二重結合周りの立体保護を軽減させたビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エン骨格を持つ不飽和ケイ素クラスター1の合成を達成し、その反応の詳細な解析から、その反応性の特徴を明らかにすることができた。また、不飽和ケイ素クラスターの骨格変換反応についても基盤になる素反応のひとつを計算科学的に見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きビシクロ[1.1.0]ブト-1(3)-エン骨格を持つ不飽和ケイ素クラスター1の反応性の精査を加える。特にケイ素-ケイ素二重結合ケイ素に対して一分子ずつ付加して生成するビシクロ[1.1.0]テトラシランは、σ結合をもたない、π結合だけから構成される単結合をもつ化合物になる可能性があるため、生成した化合物の詳細な構造解析および付加させる試剤を精査する。また、不飽和ケイ素クラスターの高い骨格変換能を活用して、π共役不飽和ケイ素クラスターの合成を検討する。また、不飽和ケイ素クラスターの骨格変換反応について、より実際の化学種に近い、嵩高い置換基を考慮した反応経路探索について計算科学的に追究する。
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