研究実績の概要 |
本研究では、研究代表者らが最近見出した、9-ボラフルオレン誘導体を用いたアルキンの芳香環化反応を利用し、クロスカップリングのみでは合成が困難な、多彩かつ特徴ある3次元骨格や湾曲・拡張構造を有するπ電子系分子・高分子群を創製し、電気伝導・発光・熱伝導・物質輸送/透過ならびに動的特性に焦点を当て、新たな機能を探求することを目的としている。また、未だ明確な答えを出せていないこの新反応のメカニズムを解明し、ホウ素化合物が関与する有機反応に新たな展開を図ることを目的としている。 平成30年度は、新規芳香環化反応の機構解明に集中的に取り組んだ。その結果、鍵ステップである9-ボラフルオレンによるアルキン誘導体の1,2-カルボホウ素化反応(Chem. Eur. J. 2018, 24, 13223)およびそれにより生成するボレピン誘導体の酸化的脱ホウ素化・炭素-炭素結合形成反応(J. Org. Chem. 2019, 84, 1941)の詳細な機構を明らかにすることができた。さらに、得られた知見をヘテロ元素含有π共役骨格構築反応へと展開した(Chem. Asian J. 2019, in press, DOI: 10.1002/asia.201900047)。上記成果に加えて、新規芳香環構築反応を利用した3次元プロペラ分子(Chem. Commun. 2018, 54, 12314)や多孔性(細孔径 2 nm, 比表面積 366 m2 g-1)を示すジグザグ型π共役ポリマー(Mater. Chem. Front. 2018, 2, 807)の合成に成功し、学術論文として出版した。
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