研究課題/領域番号 |
17H03023
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
上村 明男 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30194971)
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研究分担者 |
川本 拓治 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (70756139)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 蛍光材料 / 大環状化合物 / バイオイメージング / 水溶性 / アセタール |
研究実績の概要 |
1.エステル基の脱着による蛍光ON-OFF特性を活用した新規なバイオイメージング材料の創成:2-スルファニルヒドロキノン二量体に基づく蛍光染料のバイオイメージング材料に向けた研究で、これまでにわかっている水溶性の欠如の改善に向けた研究を進めた。2-スルファニルヒドロキノン二量体の1つの水酸基にトリエチレングリコール鎖を導入した誘導体を合成し、BSAのアミノ基が反応できるHOSuエステルをテザーとして有する誘導体に変換して新規な染料の合成を行った。HOSuエステルテザーはBSAと反応して染料をBSAに導入することはできたものの、この誘導化では十分な水溶性は確保できず、通常の生化学的実験条件で用いる濃度では水に溶けないことがわかった。すなわち複数のトリエチレングリコール鎖を導入することが必要であることが明らかとなった。 2.2-スルファニルヒドロキノン二量体を基本構造とする大環状デルタアレーンの誘導体合成とそのホストゲスト化学への新展開:デルタアレーンの誘導体の合成を検討し、2,2'-位に存在する3組のフェノール性水酸基のアセタール化と、引き続く5,5'-位の6つのフェノール性水酸基へのアシル基の導入を行った。これにより2種類の水酸基の選択的化学修飾に道が開かれた。一方、2,2'-位に導入したアセタールは、2-スルファニルヒドロキノン二量体の場合とは大きく異なって、通常の酸加水分解条件では容易に除去できないことがわかった。これは大環状構造の中に縛られていることにより、加水分解反応に必要な中間体に対する水の求核攻撃が遅いことやその可逆性によると考えられた.新たな反応条件について現在検討をしているところである
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成果にも示したように、バイオイメージング材料の開発として水溶性の向上を目指した誘導体を作成したものの、まだ十分でないことがわかったので複数のポリエチレングリコールユニットの導入により十分な水溶性を確保することを考えている。デルタアレーンの化学ではデルタアレーン化学修飾のためのアセタール化の除去では、より求核性の高い硫黄を用いるアイデアを考えており、加水分解条件にチオグリコール酸などのチオールを触媒もしくは当量用いる条件を考えている。これにより、2,2'位と5,5'位のフェノール性水酸基の選択的化学修飾を可能とし、当初予定していた、C3キラリティーの発現、大環状脂溶性ホストの構築、亜鉛やチタン、アルミニウムなどの無機塩を使った二量体の構築、C3対称ボランなどを使ってデルタアレーンに「ふた」をするなどの展開をすすめる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果から、問題点の解決を徐々に進めており、これを克服することで当初予定していた生化学的に用いられる新規蛍光材料の開発に大きく進むことが期待できる。デルタアレーンの化学も問題点を明らかにしてきたので誘導化に向けて大きな進展が期待できる。
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