研究課題/領域番号 |
17H03025
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
熊谷 直哉 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 主席研究員 (40431887)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 触媒 / 原子効率 / 環境調和型反応 / 有機合成 |
研究実績の概要 |
最近数十年の有機合成化学の精緻化は,天然物,医薬品,およびファインケミカル類の合成に必要不可欠な「立体化学を精密に制御した有機分子構築法」を刷新し,合成可能な分子のスペクトルを飛躍的に拡充した。しかしながら,生成物の高収率性を最高解とする発展を遂げたため,使用する活性化試薬類に付随して目的生成物以上の廃棄物を必然的に伴う反応例も未だ多く,実用性・環境負荷のファクターを考慮すると決して満足できるレベルにはない。本研究計画では,「この反応には試薬が必要」という常識を打ち破り,触媒デザインにより広範な有機合成反応群を試薬フリーで具現し,21世紀の有機分子構築法の一般概念として強く世界に認識させることを目標として掲げている。ソフトLewis酸(softLA)/ハードブレンステッド塩基(hardBB)協奏機能型触媒はソフトLewis塩基性基質を強力に活性化し,活性化試薬無しに廃棄物フリーで反応を駆動する。特に,最近申請者が見出した7-アザインドリンアミドは,本触媒系によりE型からZ型に異性化・活性化され,低酸性度のアミドでありながら円滑な触媒的エノラート生成が進行する非常に希有な例である。前年度にさらに-OR,-X(ハロゲン)基を導入した基質においても円滑な反応が進行することを見出した。本年度は,求電子剤を変更し不斉4置換炭素構築型反応を集中的に検討し,より付加価値の高いキラルビルディングブロック群の迅速合成を達成した。また,アキラルチオアミドを第2配位子として活用する立体選択性向上戦略も奏功し,チオアミド官能基の新たな一面を開拓することができた。特殊ヘテロ環を擁するアミド触媒は第2世代型触媒の開発に成功し,グローバルなサプライヤーからの市販化を達成した。本触媒構造検討中に新規な蛍光団骨格の同定に至り,市販化合物から1工程で合成可能な汎用性蛍光物質として発表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
数多くの環境調和型不斉触媒反応の開発に成功し,国際学術誌に論文投稿を果たした。また,特殊ヘテロ環を擁するアミド化触媒はグローバルなサプライヤーからの市販化を果たすことができた。さらに,研究過程で予想外の新規蛍光団を発見することができ,論文化し広く世界に公表した。
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今後の研究の推進方策 |
ソフトLewis酸(softLA)/ハードブレンステッド塩基(hardBB)協奏機能型触媒はソフトLewis塩基性基質を強力に活性化し,活性化試薬無しに廃棄物フリーで反応を駆動する。特に,最近申請者が見出した7-アザインドリンアミドは,本触媒系によりE型からZ型に異性化・活性化され,低酸性度のアミドでありながら円滑な触媒的エノラート生成が進行する非常に希有な例である。前年度にさらに-OR,-X(ハロゲン)基を導入した基質においても円滑な反応が進行することを見出した。本年度は,さらなる合成化学的応用性を指向し,本アミドの特色を生かして系中発生させたエノラートを触媒量のIr(III),Ru(III)錯体の可視光励起により一電子酸化してラジカルカップリングさせる反応系への応用展開も図り,特異な触媒的アミドエノラート発生技術の合成化学的有用性を追求する。同時に,特殊ヘテロ環B3NO2骨格を特徴とするDATB触媒を用いる反応開拓も進める。本骨格の官能基許容性と高い堅牢性を鑑み,連続促進型反応における応用可能性を幅広く探索していく。
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