研究課題
これまでとは全く異なる戦略“多孔性骨格を非芳香族配位子・ゲストで構築し、アルケンの二重結合の寄与を極力無くす”により、不飽和炭化水素アルケンよりも飽和炭化水素アルカンを選択的に吸着する多孔性金属錯体を系統的に合成し、その選択性発現の機序を構造・吸着特性評価によって明らかにするとともに材料設計指針を提出し、機能開拓を進めることが本研究の目的である。構造自由度の高い金属錯体を基盤物質に据え、①非芳香族部位から構築される細孔壁面を有する多孔性金属錯体を分子設計し合成する、②アルカンガスと非芳香族性細孔壁面との間に相対的に強い分子間vdW相互作用を発現させる、③その結果、高選択的アルカン吸着を実現させる、という指針の下、研究を進めた。本年度は非芳香族部位を有する有機配位子の合成を行った。安価な原料を出発物質として、①ヨウ素化、②パーフルオロアルキル化、③ジアゾ化&ヨウ素化、④カップリング、⑤加水分解の経路により4,4′-biphenyldicarboxylic acidの3,3′位に非芳香族部位であるパーフルオロアルキル基を導入した新規有機配位子を5ステップで合成し、NMR、質量分析により目的物の生成を確認した。パーフルオロアルキル鎖長を変えた誘導体配位子も同様の経路で合成可能であることから、鎖長依存性等の系統的研究が期待できる。また、研究代表者の本年度中の異動に伴い、所有装置の移設、新規実験室の立ち上げを行い、次年度以降に多孔性金属錯体の合成・構造機能評価を行う体制を整えた。
2: おおむね順調に進展している
アルカン選択吸着の実現のため、非芳香族部位であるパーフルオロアルキル基を導入した有機配位子を合成した。これまで鎖長の長いパーフルオロアルキル基を導入した有機配位子の合成例はほぼなく、本年度確立した合成法により多様な鎖長をもつ有機配位子の提供が可能であることから、今後の研究において有用な合成法となりうるものであると考えられる。年度途中の異動に伴い研究室の立ち上げを行ったため、有機配位子合成経路の探索に1年を要してしまったが、得られた有機配位子および確立された合成経路を用いて目的の非芳香族部位を有する多孔性金属錯体の系統的合成への展開が期待できることから、研究はおおむね順調に進捗している。
来年度は、確立した合成法に従い有機配位子のグラムスケールの大量合成を行うとともに、得られた有機配位子と種々の金属塩を組み合わせることにより、安定な多孔性金属錯体を合成する。特に、アルケンの二重結合と選択的に相互作用しうる金属イオンの配位不飽和サイトの形成を極力抑えるため、配位不飽和サイトをもたない三次元多孔性金属錯体[M2(OOC-R-COO)2(dabco)]n (M = 金属イオン、dabco = 1,4-diazabicyclo[2.2.2]octane)について精査を進める。単結晶が得られる錯体については低温における単結晶X線構造解析を行い、詳細な結晶構造を決定する。単結晶が得られにくい錯体に関しては、粉末X線回折、1H-NMR、XAFS測定から結晶構造を推定する。結晶溶媒の有無、溶媒脱離温度、分解温度についてはTG-DTA測定から評価し、その情報を基に温度可変粉末X線回折測定から結晶溶媒脱離後の構造変化を追跡する。また、単成分ガス吸脱着測定からアルカン/アルケンガス選択性および吸着エネルギーの精査、計算による吸着構造の解析、昨年度に導入した質量分析計を活用して流通系混合ガス分離測定から真の分離特性の評価を行い、パーフルオロアルキル基と吸着特性との相関を解明する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 10件、 招待講演 1件)
CrystEngComm
巻: 20 ページ: 17-24
10.1039/C7CE01752A
Cryst. Growth Des.
巻: 18 ページ: 286-296
10.1021/acs.cgd.7b01236
Dalton Trans.
巻: 46 ページ: 8198-8203
10.1039/c7dt01195d
J. Mater. Chem. A
巻: 46 ページ: 17874-17880
10.1039/c7ta02760e
Eur. J. Inorg. Chem.
巻: なし ページ: 4013-4019
10.1002/ejic.201700627
Phys. Chem. Chem. Phys.
巻: 19 ページ: 23905-23909
10.1039/c7cp04402j
巻: 46 ページ: 12619-12624
10.1039/C7DT02623D
NPG Asia Mater.
巻: 9 ページ: e433
10.1038/am.2017.165
J. Am. Chem. Soc.
巻: 139 ページ: 11576-11583
10.1021/jacs.7b05702