前年度までの研究で三核白金(0)錯体触媒[Pt3(SiAr2)3(PMe3)3]がアルデヒドのヒドロシリル化反応を常温から60℃の温和な条件で促進することを見出した。さらに、この反応を単核白金錯体[Pt(PPh3)3]触媒を用いて行ったところ、両者の反応結果が大きく異なることを明らかにした。 本年度はケトンのヒドロシリル化反応について検討を行った。芳香族部分を含むアセトフェノンを基質としてジフェニルシランによるヒドロシリル化を行った。三核白金(0)錯体触媒[Pt3(SiAr2)3(PMe3)3]を用いたところ、ヒドロシリル化生成物に加えて脱水素シリル化反応が、同程度の速度で起きていることがわかった。一方で単核白金錯体を用いた反応では、ヒドロシリル化反応のみが選択的に進行した。ここでは、三核錯体の3つの白金のうち、ケイ素配位子が直接結合していない白金の配位座が中間体からのβ水素脱離反応を促進し散るものと考えられる。これまでのアルデヒドの反応とあわせて、本研究で行った白金三核錯体を触媒とする反応は単核錯体と全く異なる反応機構で進行するものであり、三核錯体が反応中に単核に変化してから触媒となる機構が否定できた。 新たな触媒機能を有する多核錯体として白金二個と金一個が橋かけケイ素配位子で結合した異種金属三核錯体を合成した。この錯体は、白金0価と金1価という二つのd10電子配置を有する遷移金属が従来の白金、パラジウム0価錯体よりも短い金属間結合をもつことが明らかになった。
|