研究課題
銅錯体による分子状酸素の活性化は、銅を含む酸化酵素や銅を触媒とする各種有機合成反応における重要な化学反応プロセスであり、錯体化学、生物無機化学、触媒化学、有機合成化学などの広い分野で活発に研究されてきた。その結果、これまでに様々な単核および二核の銅-活性酸素錯体が合成され、それらの物性や反応性が明らかにされてきた。しかし、それらの構造や反応性の制御機構については不明な点が多く残されている。そこで本研究では、銅錯体による酸素活性化の精密制御と応用をめざして、比較的剛直な6員環、7員環、8員環の環状ジアミン骨格にピリジルアルキル基を導入した一連の三座配位子を用いて系統的に検討した。更にその結果を基にして、これまでに報告例の無い新規な銅活性酸素錯体(単核銅(II)-オキシラジカル錯体や混合原子価二核銅オキソ錯体など)の創成と、不活性な炭化水素化合物の触媒的酸化反応系の構築をめざした。本年度は「銅錯体による酸素活性化の精密制御と応用」について、次に掲げたような項目について詳細に検討を行った。(1) 環状ジアミン骨格を有する新規なN3系三座配位子の設計と合成を行った。(2) 銅(I)および銅(II)錯体の合成と構造決定、および化学的特性の評価(構造活性相関の解明)を行った。(3) 銅(I)錯体と分子状酸素の反応、および銅(II)錯体と過酸化物との反応に付いて検討し、生成する活性酸素錯体の同定を試みた。(4) 銅錯体を触媒として用いたアルカンの触媒反応について検討した。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた三核銅錯体の合成と構造決定、物理化学特性の評価、触媒活性については、予定通り検討を行った。しかし、期待していたような高い触媒活性 が得られなかったので、次に、8員環、7員環、6員環のジアミン骨格を有する一連の単核化配位子を設計・合成し、銅(I)および銅(II)錯体の合成、構造決定、 物理化学的特性評価を行うこととした。
新たに合成した8員環、7員環、6員環のジアミン骨格を有する一連の単核銅(I)および銅(II)錯体と各種基質との反応について系統的に検討を行い、反応機構を あきらかにする。得られた情報をもとにして、それらを触媒とするアルカンの触媒的酸化反応系の構築をめざす。反応機構についても詳細に検討し、不活性アルカンの効率的な酸化を可能とする錯体触媒化学の学理の創成をめざす。
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