研究課題/領域番号 |
17H03031
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊東 忍 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30184659)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 酸素の活性化 / 銅錯体 / 炭化水素の酸化 / 多座配位子 / 活性酸素錯体 |
研究実績の概要 |
銅錯体による酸素の活性化は、銅含有酸化酵素や銅を触媒とする各種有機合成反応における重要な化学反応プロセスであり、錯体化学、生物無機化学、触媒化学、有機合成化学などの広い分野で活発に研究されてきた。その結果、様々な単核および二核の銅-活性酸素錯体が合成され、それらの物性や反応性が明らかにされてきた。しかし、それらの構造や反応性の制御機構については不明な点が多く残されている。そこで本研究では、銅錯体による酸素活性化の精密制御と応用をめざして、比較的剛直な8員環の環状ジアミン骨格にピリジルアルキル基を導入した一連の多座配位子を用いて系統的に検討を行った。これにより、これまでに報告例の無い新規な銅活性酸素錯体の創成と、炭化水素化合物の触媒的酸化反応へと応用を目指した。 まず、8員環の環状ジアミン骨格に、エピクロロヒドリンを作用させて得られるクロロメチル基を有するアミノアルコール誘導体にピリジルメチルアミンやピリジルエチルアミン誘導体をSN2反応で導入し、新規な三核化多座配位子を合成した。次に、グローブボックス中で、各配位子と銅(I)塩を反応させ、対応する銅(I)錯体を調製した。銅(II)錯体についても、各配位子を銅(II)塩と反応させて合成した。単結晶が得られたものについては、X線結晶構造解析法により構造を決定した。また、各銅錯体については、紫外可視吸収スペクトル、酸化還元電位、EPRなどを測定し、それらの物理化学的特性を明らかにした。さらに、銅(II)錯体と過酸化物との反応や、銅(I)錯体と分子状酸素との反応により生成する活性酸素錯体の物理化学的特性について詳細に検討すると共に、得られた活性酸素錯体の反応性の解明と触媒反応への応用を試みた。 更に、7員環や6員環の環状ジアミン骨格を有する多座配位子を合成し、一連の銅(I)および銅(II)錯体を合成した、構造と物性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた三核銅錯体の合成と構造決定、物理化学特性の評価、触媒活性については、予定通り検討を行った。しかし、期待していたような高い触媒活性が得られなかったので、次に、8員環、7員環、6員環のジアミン骨格を有する一連の単核化配位子を設計・合成し、銅(I)および銅(II)錯体の合成、構造決定、物理化学的特性評価を行うこととした。本年度は、配位子と錯体の合成と物性評価まで行った。
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今後の研究の推進方策 |
新たに合成した8員環、7員環、6員環のジアミン骨格を有する一連の単核銅(I)および銅(II)錯体と各種基質との反応について系統的に検討を行い、反応機構をあきらかにする。得られた情報をもとにして、それらを触媒とするアルカンの触媒的酸化反応系の構築をめざす。
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