研究課題
銅錯体による分子状酸素の活性化は、銅含有酸化酵素や銅を触媒とする各種有機合成反応に含まれる重要な化学反応プロセスであり、錯体化学、生物無機化学、触媒化学、有機合成化学などの幅広い分野で活発に研究されてきた。その結果、様々な銅-活性酸素錯体が合成され、それらの物性や反応性が明らかにされてきた。しかし、それらの構造や反応性の制御機構については不明な点が多く残されている。そこで本研究では、銅錯体による酸素活性化の精密制御と応用をめざして、比較的剛直な6~8員環の環状ジアミン骨格にピリジルアルキル基を導入した一連の3座および4座配位子を用いて系統的に検討を行った。本年度は6、7、8員環の環状ジアミンにピリジルメチルアミンを導入した4座配位子の銅(II)錯体を用いて検討を行った。各銅(II)錯体については、結晶構造、酸化還元電位、各種分光学的特性について検討を行い、構造と物理化学的特性の相関関係について詳細に検討を行った。その結果、配位子の構造を規制することによって、銅中心のdx2-y2軌道のエネルギー準位が系統的に変化することが明らかになった。さらに、各銅(II)錯体と過酸との反応について検討し、酸素-酸素結合の開裂に及ぼす配位構造の影響について検討を行った。その結果、6員環ジアミンを有する配位子の場合、銅(II)-過酸付加体が安定化されるのに対し、7員環および8員環ジアミンの配位子では、酸素-酸素結合が開裂し、外部基質の酸化が効率よく進行することがわかった。この場合にも配位子の構造規制による銅(II)錯体のdx2-y2軌道のエネルギー準位の系統的な変化が重要であることがDFT計算を用いた検討などから明らかになった。本研究の成果は、銅中心の構造規制が酸素の活性化に重要な影響を果たしていること示すものであり、銅触媒の機能解明と設計に対して重要な指針を与えるものである。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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