次亜塩素酸錯体の結合開裂様式と構造の関わりを解明するため、次亜塩素酸錯体のEXAFS測定を試みた。EXAFSのサンプルの調整条件の設定から行った。室温付近でも安定に取り扱えるサンプルを調整するため、ポルフィリン環のすべての水素原子をフッ素原子で置換した錯体とマンガン4価サレン錯体から次亜塩素酸を合成した。28個のフッ素原子による非常に強い電子求引性効果のため、次亜塩素酸錯体は、溶液状態では室温付近で数分安定に存在できることを見いだした。この錯体を固体で取り出すことを行った。種々の溶媒条件を検討した。その結果、ペンタンとエーテルの混合溶媒中から測定に適した固体サンプルが得られることが明らかとなった。得られた次亜塩素酸錯体の純度は、EPRにより確認した。EXAFS測定は、高エネ研のビームラインを用いて行った。サレン錯体に関して良好なデータが得られ、次亜塩素酸錯体の構造に関する知見を得ることができた。 これまでのモデル錯体での知見を基に次亜塩素酸イオンを活用できる金属酵素の開発を行った。チトクロームP450からハロペルオキシダーゼへの酵素機能変換を試みた。はじめにチトクロームP450の大腸菌発現系の作成を行った。ヘム合成系を組み込むこと、ヒスタグにより大量から容易に発現酵素を得ることができた。発現酵素と酸化剤をストップドフローにより反応させ、活性種となる高原子価オキソ錯体の生成を確認した。ペルオキシダーゼの活性種に比べ安定性は非常に低いが、高い反応性を示すことが明らかとなった。塩素イオンとの反応には、塩素イオンの結合スペースの重要性が示唆された。
|