研究分担者 |
近藤 次郎 上智大学, 理工学部, 准教授 (10546576)
實吉 尚郎 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (10564784)
山田 亮 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20343741)
田中 好幸 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (70333797)
鳥越 秀峰 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (80227678)
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研究実績の概要 |
2020年度の研究目標は、2019年度に引き続き、DNA二重鎖中で無限に金属イオンが連続する超分子錯体(金属-DNAワイヤー)を合成し、その構造と物性を研究することであった。これまでの研究により、Ag(I)-DNAワイヤーを与えるオリゴヌクレオチド、5’-(GGACTBrC GACTCC)-3’ (Nature Chemistry, 2017, 9, 956-960), 及び、5’-d(CGCGCBrUCBrUCGCG)-3’ (論文作成中)を見出した。即ち、これらのオリゴヌクレオチドとAg(I)イオンの溶液からAg(I)-DNAワイヤーの結晶を得た。さらに2019年度はHg(II)とTTTGCの混液から、DNA構造に沿ってHg(II)イオンが連続する、長鎖のHg(II)-DNAワイヤーの結晶を得た(Angew. Chem. Int. Ed., 2019, 58, 16835-16338)。 2020年度は、NMR法を用いてAg(I)-DNAワイヤーの溶液中の構造を研究した結果、結晶構造と同様のワイヤー構造が溶液中で形成されることを確認した。即ち、結晶構造を与えた5’-d(CGCGCBrUCBrUCGCG)-3’と、その3’末端のG(グアニン)残基を取り除いた5’-d(CGCGCBrUCBrUCGC)-3’は、溶液中で連続する11ヶのAg(I)イオンを含む短鎖のAg(I)-DNAワイヤーを与えることが分かった。一方、結晶構造を与えた5’-d(CGCGCBrUCBrUCGCG)-3’のNMRスペクトルが、Ag(I)イオンを添加するにつれてブロードとなったことから、5’-d(CGCGCBrUCBrUCGCG)-3は溶液中で長鎖のAg(I)-DNAワイヤーを与えることが示唆された。即ち、オリゴヌクレオチドとAg(I)イオンから長鎖のAg(I)-DNAワイヤーが形成されるプロセスが明らかとなった。短鎖のAg(I)-DNAワイヤーは、単分子物性研究に有用であると期待される。 チミン-Hg(II)-チミン塩基対を有する短鎖DNA二重鎖の導電性を測定したことは、単分子物性解析の端緒となった。
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