研究実績の概要 |
2019年度は、下記の(1)~(3)の課題について成果を得ることができた。 (1)メカニズムの詳細な解明:N,N‘-bis(3,4,5‐trialkoxyphenyl)ureaにおいて、R = CH3として、安定化エネルギーをDFT計算したところ、10kcal/mol程度であり、R = n-C10H21の分極反転の閾値から求めた値とほぼ一致しており、アキラルなウレア化合物では、分子間水素結合のみが分極カラム維持に寄与していることが判明した。これに対して、(S)-シトロネリル基が導入されたウレアでは、反転閾値が20kcal/mol程度まで上昇することから、一方向の螺旋形成によるアルキル―アルキル、π-π、双極子-双極子などの相互作用が複合的に分子間力として作用し、約10kcal/molの更なる安定化を生じ、強誘電性を発現していることが分かった。 (2)ジアミド化合物の物性評価:強誘電性を室温で発現させる目的で、アミド化合物N,N‘-bis(3,4,5‐trialkoxyphenyl)malonic diamideや1,3-bis(3,4,5‐trialkoxybenzoyl-amino)propaneなどのジアミド化合物の物性を調査したところ、液晶温度帯が低下し、電場応答も室温でできるようになったが、アミド基では分極維持ができなくなることが明らかになった。 (3)新規な有機圧電応答材料の開発:アルキル鎖の途中に二重結合のあるオレイル基を有するウレア分子において、ジチオールを光反応させて、ヘキサゴナルカラムナー相の構造・配向を保持したポリマーを作製することに成功した。電場印加しながら一体化させると分極フィルムが生じることが判明し、電場印加しないときと比較して、圧電応答係数が約3倍以上になることが判明した。有機圧電材料の新しい作製法として、電場応答柱状液晶相が利用できることを示した。
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