研究課題/領域番号 |
17H03037
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 康介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (40595667)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 金属酸化物 / ポリオキソメタレート / 触媒 / 光触媒 / ナノ材料 |
研究実績の概要 |
本研究では、ナノ反応場を有する分子状金属酸化物への精密金属集積法を開発し、電子状態や反応活性点構造の設計よる高機能触媒材料、磁性材料、光学材料等の開発に向けた新たな材料設計技術を開拓することを目的としている。 本年度は、前年度に開発したナノ反応場を有する環状金属酸化物クラスターを用いて遷移金属イオンの位置選択的な集積を行った。特に、前年度に得た知見を生かして、金属酸化物クラスターの反応サイトの一部をアルコールで保護することにより、Mn(II), Co(II), Ni(II), Cu(II), Zn(II)等の金属イオンを数と位置を制御して導入した環状複合金属酸化物の合成に成功した。単結晶X線構造解析により分子構造を決定し、金属イオンの導入に伴って、これまでに報告例のない新規環状金属酸化物へと構造変化したことを明らかにした。直流磁化率測定により、金属イオンの種類に応じた金属間の磁気的相互作用を明らかにした。また、環状金属酸化物の部分構造である[α-P2W12O48]14-を用いて金属イオンとの反応を行った結果、環状金属酸化物と同様の構造変化を伴って金属が導入されることが明らかになり、環状金属酸化物の反応性制御に関して重要な知見を得た。さらに、上記で開発した合成法を応用して、異種金属の導入やさらなる多核化、貴金属の導入にも成功した。これらの環状金属酸化物の触媒活性評価にも着手した。 また、バナジウムを導入した分子状金属酸化物が、酸素を酸化剤、可視光を駆動力とした有機基質の酸化反応に高い活性を示すことも見出した。特に、種々のスルフィドから対応するスルホキシドが高収率・高選択的に得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
環状金属酸化物を利用した材料設計において、Mn(II), Co(II), Ni(II), Cu(II), Zn(II)等の様々な金属イオンを選択的に導入した構造体を得ることに成功した。特に、金属の導入により、当初は想定していなかった新規な環状構造へと構造変化することが明らかになり、今後の材料設計の可能性が広がった。さらに、環状金属酸化物の部分構造を利用した金属多核構造の合成や、可視光応答型光触媒の開発にも成功するなど、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発した環状金属酸化物を利用した金属多核構造を用いて、異種金属の導入やさらなる多核化を進めるとともに、貴金属等の新たな金属種の導入についても検討する。また、合成した環状金属酸化物触媒を用いて、水の酸化反応や有機基質の選択酸化・還元反応等を行い、触媒活性試験の結果をもとにして、触媒構造の再設計を行う。
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