研究実績の概要 |
単層カーボンナノチューブ(チューブ径:1.5nm)が反応系に存在すると、大気圧下において、通常約1万気圧の高圧印加が必要なトランスーシクロヘキサンジオール(CHD)およびベータ-Cuフタロシアニン生成反応が進行することを確認した。特にCHD生成反応については、その場赤外分光法を適用して、単層カーボンナノチューブ細孔内での反応経路を確定した。1,2エポキシシクロヘキサン(ECH)からCHDが生成するときに、通常安定なシスーECHよりもSWCNTのナノ空間中ではシスーECHが生成しやすく、1GPaを印加せずにCHDが多量にできることが分かってきた(論文準備中)。またカーボンの1nm以下の細孔空間中に平坦なイオン液体分子を導入すると、従来にないイオンの集合構造が確認された。イオン液体を0.7nm幅のスリット状のカーボン細孔中に導入すると、イオン液体分子が一層で集まれる。その構造をシンクロトロンX線を用いて散乱プロファイルを求め、同時に分子(イオン)間相互作用を用いて細孔空間内の分子イオン配置を分子シミュレーションから求め、X線散乱に合う分子間構造を決定した。いわゆるハイブリッドリバースモンテカルロシミュレーションである。これによりカチオンの周りにはより多くカチオンが、アニオンの周りにはより多くアニオンが集合するという特異構造の形成を明らかにした。この原因は極めて小さく空間、その空間をなす壁が導電性であると細孔内のイオンのイメージチャージによって、カチオン同士あるいはアニオン同士の反発が軽減されることが分かってきた(Nature Materials, 2017)。これはナノスケールの導電性空間の特異性の一つである。また1枚のグラフェンとダイヤモンドの間に0.7nm以下の空間があると、極めて顕著な吸湿性を生み出すことも明らかにした(Langmuir, 2017, Carbon ,2018)。
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