研究課題/領域番号 |
17H03040
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
下間 靖彦 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40378807)
|
研究分担者 |
三浦 清貴 京都大学, 工学研究科, 教授 (60418762)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | レーザー / ガラス / 結晶化 / 希土類元素 / 光学異方性 / 球面収差補正 |
研究実績の概要 |
フォトンとプラズモンの量子干渉によって、ナノスケールで酸素欠乏欠陥が自己配列したナノ周期構造をバルクガラス内部の任意の場所に形成可能である。本研究では、情報ストレージ技術が抱える課題のうち、特に記録ビット形成技術に関して、(技術課題1)記録密度および(技術課題2)長期安定性を解決するため、(研究項目1)ナノ周期構造を記録ビットとして利用することによる多次元高密度光メモリを開発し、(研究項目2)ガラス組成に対するナノ周期構造の温度特性を評価し、記録ビットの長期保存を実証する。最終的に最適化された組成のガラス基板内部に記録ビットを形成し、半永久的な保存が可能な多次元高密度光メモリ技術を構築することを目標としている。本年度は、(技術課題1)記録密度向上を目指し、(アプローチ①)記録ビットの多次元化、(アプローチ②)球面収差補正による記録ビットの最小化を実施した。具体的には、(アプローチ①)について、レーザー照射によって磁性異方性を発現するガラス組成を探索した。磁気異方性を示すガラスとして、特に大きな磁気モーメントを示す希土類元素を多量含むDy2O3-Al2O3ガラスをガス浮遊レーザー溶融法により合成し、レーザー照射によって誘起される相分離現象に伴った部分結晶化現象を確認した。さらに(アプローチ②)について、ガラス試料の屈折率に由来する球面収差を液晶空間光変調器(SLM)により補正することによって、加工痕の光軸方向への伸びを約半分に抑制することを確認した。さらに単位体積当たりのレーザー光のエネルギー密度が向上したため、記録ビットの形成に必要なエネルギー効率を約20%低減できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの長期安定保存が可能な超高密度光メモリを開発するため、記録ビットの書き込み技術に関する技術課題(記録密度向上)に対して、本年度は、(アプローチ①)光学異方性および磁気異方性による記録ビットの多次元化、(アプローチ②)球面収差補正による記録ビットの最小化、の2つの切り口で課題に取り組む予定であった。アプローチ①について、大きな磁気モーメントを示す希土類元素を多量含むガラスの合成に成功し、さらに照射レーザーの偏光方向に依存したナノスケールの部分結晶化が起きていることを見出した。アプローチ②について、球面収差補正による加工痕(記録ビット)の光軸方向への伸びの抑制、さらに記録ビット形成のためのエネルギー効率が向上することを明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
合成したガラス内部に光誘起した記録ビットの長期安定性を実現するため、以下のアプローチで課題解決を目指す。(アプローチ③)光学塩基度を指標としたガラス組成とナノ周期構造形成の体系化:修飾酸化物(Li2O, Na2O, CaO等)や中間酸化物(Al2O3, TiO2, SnO2等)を含むシリケートガラスをガス浮遊レーザー溶融法もしくはゾルゲル法により合成し、それらについて、レーザー照射条件(パルス幅、パルスエネルギー、パルス繰り返し周期、照射パルス数)を系統的に変化させ、局所的に複屈折が発現するガラス組成とレーザー照射条件の関係を体系化する。特に、ガラスの配位構造をX線光電子分光法(XPS)や核磁気共鳴法(NMR)を用いて評価し、ナノ周期構造形成との関係を明らかにする。
|