今後の研究の推進方策 |
合成したガラス内部に光誘起した記録ビットの長期安定性を実現するため、以下のアプローチで課題解決を目指す。(アプローチ④)弾性率を指標としたガラス組成とナノ周期構造形成の体系化:ガラス内部に形成される偏光依存ナノ周期構造は、シリケートガラスの場合は酸素欠乏欠陥、希土類元素(RE = Dy, Tb, Gd, Eu等)を多量含むRE2O3-Al2O3ガラスの場合は相分離による部分結晶化、の2種類に大別できる。Cr添加シリケートガラスを含むシリケートガラスの場合、形成後のガラスを保持温度と保持時間を変えて熱処理することによって、酸素欠乏欠陥の緩和過程を評価する。保持温度および保持時間に対する複屈折由来の位相差のアレニウスプロットから、各種ガラス組成に対してナノ周期構造の長期安定性を評価する。特にCr添加シリケートガラスにおいて、保持温度および保持時間に対するCrの価数変化は吸収スペクトル測定やESR測定により評価する。一方、希土類元素を多量含むRE2O3-Al2O3ガラスは、保持温度および保持時間に対して部分結晶化領域がどのように変化するのかを高分解能TEMにより観察する。加えて、壊れにくいガラスへの応用を目指し、より充填密度の大きい構造を有する高弾性率ガラスに研究対象を拡げる。特にSrO-Al2O3、RE2O3-Al2O3 (RE = La, Y, Lu, Sc)等のガラスやこれらとSiO2を混合した3成分ガラスをガス浮遊レーザー溶融炉により合成し、相分離による部分的に結晶化した領域が周期的に配列した偏光依存ナノ周期構造の形成を試みる。
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