研究課題
前年の結果から、イオン液体中の金属イオンの拡散挙動にはイオン液体特有のドメイン構造が深く関連していることが分かった。そこで、本年は、こうしたドメイン構造を含むイオン液体の局所構造が具体的にどのように関与し、拡散を制御する際にどのような制御因子があり得るのかについて詳しく調べた。イオン液体のドメイン構造は、極性ドメインと非極性ドメインに分類されることが分かっている。そこで、イオン液体のアルキル鎖(非極性ドメインを構成)の長さを変えることによって、極性ドメイン:非極性ドメインの体積比を変化させ、それらの中で金属イオンの拡散挙動がどのように変化するかを調べた。その結果、(1) Li+イオンなど、ホール(ホッピング拡散サイト)を埋める不純物を添加すると、金属イオンは極性ドメインから非極性ドメインへその拡散パスを変化させる。(2)パスの変化が起きる不純物添加濃度は、極性ドメインの体積比が大きいほど、高くなる。などのことが明らかになった。さらに温度依存性の実験結果より、極性ドメイン内よりも非極性ドメイン内におけるホッピング拡散のポテンシャルが低いことが分かった。このことは、金属イオンが非極性ドメイン内を拡散すると全体の拡散係数が大きくなるという実験事実とも一致する。他にXPSデータなどの結果もあわせて検討した結果、イオン液体中の局所構造と金属イオンの拡散挙動の関係が明らかになった。これらの結果は、金属イオン拡散高速化の新たな制御因子を得たことを示しており、種々のデバイスへの応用展開が期待できるものである。
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