研究課題/領域番号 |
17H03044
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
佐藤 久子 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 教授 (20500359)
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研究分担者 |
吉田 純 北里大学, 理学部, 講師 (60585800)
梅村 泰史 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 応用科学群, 教授 (70531771)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イリジウム錯体 / キラリティ / 粘土鉱物 / LB膜 / 発光特性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、粘土ナノシート面上に吸着した分子(ドナーおよびアクセプター)にエネルギー移動と3重項-3重項消滅を逐次的に起こさせ、高効率の光エネルギーアップコンバージョン系を構築することである。ドナーとしてキラルな陽イオン性シクロメタレート型イリジウム(III)錯体、アクセプターとしてピレン誘導体を用いる。さらに、粘土LB法により両親媒性Ir(III)錯体と粘土鉱物ナノシートとの複合膜(厚さ数ナノメーター)を製造し、膜でのアップコンバージョン系を目指している。本年度は粘土ハイブリッドLB膜において、基板を工夫することにより、青色発光イリジウム錯体のみを用いて、発光増大や発光色の変調(赤色)に成功した。さらに、粘土鉱物と発光性イリジウム錯体のハイブリッド超薄膜を利用したリアルタイム酸素センシングに成功した。例えば、モンモリロナイトを用いたハイブリッド超薄膜からの発光は、0.1~101.3 kPaの圧力範囲および253ー313 Kの温度範囲で酸素ガスの導入または排気に可逆的な迅速応答を示した。また合成サポナイトとのハイブリッド膜においては発光寿命を用いた迅速な酸素センシングをおこなえることが分かった。並行して、ドナーとしてのイリジウム錯体としては、2種類の幾何異性体(シス体、トランス体)の単離同定に成功し、その光学分割によりキラル体を得ることができた。発光特性の比較を行ったところ、ジクロロメタン中における励起波長 430 nmでの発光極大波長はシス体では570 nm(橙色発光)、トランス体では550 nm(黄色発光)と約20 nmの差が見られ、幾何異性体による発光色の違いが観察された。さらに、レーザーを用いたアップコンバージョン用装置の新規開発をおこない、ジクロロメタン中におけるアップコンバージョンの予備的検討をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
繰り越しによる研究によって、粘土ハイブリッドLB膜において、基板を工夫することにより、青色発光イリジウム錯体のみを用いて、発光増大や発光色の変調(赤色)に成功した。簡単な方法での発光色の変調に成功し、論文として発表した。また、微量酸素センシングに関してもリアルタイムセンシングに成功し、論文として発表した。さらに、レーザーを用いた新規に構築したシステムを用いて、イリジウム錯体を用いたアップコンバージョンの可能性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
アップコンバージョンの可能性のあるイリジウム錯体の合成に成功した。しかしながら、これまでの結果で、粘土鉱物とのハイブリッド化においては、当初の想定に反し、溶液中とは異なる特異な発光挙動を示すことが判明した。研究遂行上、この現象の解明が不可欠なため、ハイブリッド化条件探索の詳細検討、特に、ハイブリッド化膜条件の探索を追加して実施する必要が生じたためにこの研究を再度推進することにした。 さらに、これまでに合成してきた各種イリジウム錯体を用いて、コロイド粘土とのイリジウム錯体とのハイブリッド化を検討する。また、そのために、水溶性のアクセプターの合成を進める。キラリティ効果をみるために、ドナーのイリジウム錯体の光学分割をおこなう。これにより粘土面でのキラリティ効果を用いて、アップコンバージョン効率向上を目指す。
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