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2017 年度 実績報告書

オリゴマー分子,分子会合体,分子集合体レベルにおけるラセン物質の合成と動的機能

研究課題

研究課題/領域番号 17H03050
研究機関東北大学

研究代表者

山口 雅彦  東北大学, 薬学研究科, 教授 (30158117)

研究分担者 有澤 美枝子  東北大学, 薬学研究科, 准教授 (50302162)
谷井 沙織  東北大学, 薬学研究科, 助手 (20792295)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード触媒設計 / 反応 / 分子会合反応制御 / 不均一反応場 / 動的機能
研究実績の概要

二重ラセン分子複合体の間では相互作用が強く働くので,会合による自己組織化を起こしやすく,環境によって様々な不均一系物質を与える.本研究は二重ラセン形成の分子レベル会合と組み合わせて,新規な動的機能を発現するものである.このことに関する考察をまとめた総説を発表した.
逆熱応答は低温で解離して高温で会合する興味深い現象であり,当研究室で分子レベルでの現象を初めて見だした.親水性基エチニルヘリセンオリゴマーのホモ二重ラセン複合体形成において,水系溶液中で逆熱応答が起こることを先に報告した.本年度はこの現象の溶媒効果を調べて,比較的広い範囲の水系溶液中で見られる現象であることを確かめた.
筋肉などの異方性物質は生体内で有用な機能を発現している.また,液晶デスプレイは大面積の異方性液晶を利用している.従って,大面積で分子が一様に一方向に配列した異方性物質を合成することができれば多様な機能が期待できる.しかし,従来は高温でロールによる機械的刺激を与える方法などに限られていた.本研究において,溶液から溶媒を常圧下で気化させることによってセンチメートルサイズの異方性フィルムおよび繊維が合成できることを示した.末端に長鎖アルキル基を有する擬鏡像体エチニルヘリセン4および5量体が溶液中でヘテロ二重ラセンを形成した.濃度を上げるとリオトロピック液晶ゲル,即ち異方性繊維構造を有するゲルを生じた.これを放置して溶媒を除去すると大面積に異方的に繊維が配列したフィルムを与えた.貧溶媒中に射出すると異方的な繊維を生じた.異方性物質を作成する簡便で新規な方法である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

二重ラセン分子複合体の自己組織化を用いて,構造制御した不均一系物質を合成して新しい機能の発現を探索することが本研究の目的である.この観点から,リオトロピック液晶ゲルを開発した.これはリオトロピック液晶とゲルの性質を併せ持つ新しいタイプの不均一物質である.二重ラセン分子複合体の自己組織化を利用した点も特徴的である.この性質に興味が保たれるとともに,新しい材料としての用途も期待できる.その例として,リオトロピック液晶ゲルから簡便な操作によってセンチメートルサイズの領域で均一に異方性を実現した.また,構造色を呈することも見だした.貧溶媒中に射出すると異方性繊維を与えた.これらは異方性物質のあたらしい合成法である.
逆熱応答は本研究の重要な成果である.通常の分子会合体は加熱によって会合することと逆の現象である.また,水系溶媒中で可逆的な二重ラセン分子複合体形成反応を起こせることは適用範囲を大きく広げた.
本年度に有澤博士との連携で遷移金属触媒を用いた反応の不均一系反応場の構築に関する基礎的なデータを得た.あわせて,有機溶媒中における不均一反応系,特に固体表面における反応解析に関して知見を得た.これにより,本研究で計画した分担研究は一度終了することとした.現在純粋な水溶媒中における遷移金属触媒反応を開発しつつあるので,これが完成した段階で水系不均一系反応場の研究を実施する予定である.なお,有機溶媒系の不均一系反応の開発に適した遷移金属触媒反応の研究は谷井助手によって継続する.

今後の研究の推進方策

芳香族複素環化合物の合成研究を継続するとともに,これを組み込んだヘリセンオリゴマーを開発する.合成したオリゴマー分子の二重ラセン形成を検討する.エチニルオリゴマーのP-体オリゴマーとM-体オリゴマー擬鏡像体を混合すると, 生成したヘテロ二重ラセンがさらに繊維状に集合体形成して網目構造の中に溶媒が取り込まれてゲル化する.末端置換基を変えると,リオトロピック液晶ゲルを形成した.いずれも二重ラセンの自己組織化によって生成した繊維状構造が溶媒を取り込んで固化した物質である.誘導体を合成して,この詳細をさらに検討する.水溶性二重ラセン化合物をリポソーム膜に規則的かつ位置特異的に配置した不均一物質系を合成する.また,多様なヘリセンオリゴマーの二重ラセンが自己組織化による分子集合体形成を起こすことを確認する.
合成した二重ラセン会合体の分子集合体による不均一物質の機械的強度,発光,着色,多層系ゲル形成などの性質を詳細に検討する. また, 熱, 光, 圧力, pH, 磁場などの物理的刺激, キラルな小分子などによる化学的刺激応答性を調べる. 具体的には,リオトロピック液晶ゲルから溶媒を取り除くと,センチメートルサイズの均一で異方的なフィルムを与える.このような二重ラセン会合体分子集合体による異方性物質の性質を検討する.
不均一物質系における二重ラセン分子会合体の動的機能について検討する.具体的には1)機械的刺激によるキラル対称性の破れ,2)リポソームの熱応答と形状変化,3)異方的フィルムおよび繊維の熱応答,4)遷移金属触媒反応などを取り上げる.

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件)

  • [雑誌論文] Long-range Anisotropic Structural Films and Fibers Formed from Lyotropic Liquid Crystal Gels Containing Hetero-double-helices with C16 Terminal Groups2018

    • 著者名/発表者名
      N. Saito, H. Kobayashi, K. Kanie and M. Yamaguchi
    • 雑誌名

      Langumuir

      巻: accepted ページ: accepted

    • DOI

      10.1021/acs.langmuir.7b04385

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Synthesis and Self-Assembly of Chiral Cylindrical Molecular Complexes: Functional Heterogeneous Liquid-Solid Materials Formed by Helicene Oligomers2018

    • 著者名/発表者名
      N. Saito and M. Yamaguchi
    • 雑誌名

      Molecules

      巻: 23 ページ: 277-277

    • DOI

      10.3390/molecules23020277.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Inverse thermoresponse of a water-soluble helicene oligomer in aqueous-organic mixed solvent systems2017

    • 著者名/発表者名
      N. Saito, H. Kobayashi and M. Yamaguchi
    • 雑誌名

      Tetrahedron

      巻: 73 ページ: 8459-8464

    • DOI

      doi.org/10.1016/j.tet.2017.08.046

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Chemical braking exhibited by ethynylhelicene (M)-nonamer in solution: Competitive reaction system of self-catalysis to form double-helix and approach towards equilibrium to form random-coil2017

    • 著者名/発表者名
      T. Sawato, A. Yagi, M. Ariaswa and M. Yamaguchi
    • 雑誌名

      Tetrahedron

      巻: 73 ページ: 2801-2805

    • DOI

      10.1016/j.tet.2017.03.083

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mechanical Stirring Induces Heteroaggregate Formation and Self-assembly of Pseudoenantiomeric Oxymethylene Helicene Oligomers in Solution2017

    • 著者名/発表者名
      T. Sawato, N. Saito, M. Shigeno and M. Yamaguchi
    • 雑誌名

      Chemstry Select

      巻: 2 ページ: 2205-2211

    • DOI

      doi.org/10.1002/slct.201700303

    • 査読あり
  • [学会発表] ビシクロヘキシルを有するエチニルヘリセンオリゴマーの合成とリオトロピック液晶ゲル形成2018

    • 著者名/発表者名
      齋藤 望、湯澤 玲介、山口 雅彦
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会
  • [学会発表] C16アルキル末端を有するエチニルヘリセンオリゴマーによる長距離単一ドメインの異方的自己組織体形成2018

    • 著者名/発表者名
      齋藤 望、小林 東史、山口 雅彦
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会
  • [学会発表] 複素環スルフィドのホスフィニル化による複素環ジアルキルホスフィン誘導体のロジウム触媒合成2018

    • 著者名/発表者名
      有澤 美枝子、田沢 健、山口 雅彦
    • 学会等名
      日本化学会第98回春季年会
  • [学会発表] ジスルフィドのロジウム触媒的チオリン酸エステル化反応2018

    • 著者名/発表者名
      有澤 美枝子、福本 昂平、山口 雅彦
    • 学会等名
      日本化学会第98回春季年会
  • [学会発表] ペンタフェニルシクロペンタホスフィンPhP基のジスルフィドへのロジウム触媒挿入反応2018

    • 著者名/発表者名
      有澤 美枝子、澤畑 恭佑、山田 朋貴、山口 雅彦
    • 学会等名
      日本化学会第98回春季年会
  • [学会発表] 複素環エーテルとN-ベンゾイル複素環化合物のC-N結合生成によるビス複素環化合物の触媒的合成法の開発2018

    • 著者名/発表者名
      谷井 沙織、有澤 美枝子、山口 雅彦
    • 学会等名
      日本化学会第98回春季年会
  • [学会発表] 1,4-ジチインのロジウム触媒的異性化反応とアルキン交換反応2017

    • 著者名/発表者名
      有澤 美枝子、澤畑 恭佑、市川 拓哉、山口雅彦
    • 学会等名
      化学系学協会東北大会
  • [学会発表] 複素環チオ基交換を伴うロジウム触媒的非対称ビス複素環スルフィドの合成反応2017

    • 著者名/発表者名
      田沢 健、有澤 美枝子、山口 雅彦
    • 学会等名
      第28回万有仙台シンポジウム

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公開日: 2018-12-17  

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