研究実績の概要 |
最終年度であることを踏まえて、各種ポリエンの合成と有用分子の合成を実施した。各種ボリル化共役トリエンの触媒的合成では海洋天然物Navenone Bの全合成を行い論文発表を行った。この論文は優秀論文に選出された(BCSJ, 94, 2113 (2021))。ボリル化アルキンとボリル化共役ジエンの交差二量化反応では、アルキンの位置選択性により、ボリル基が末端に位置する生成物と内部に位置する生成物が生成する。内部にあるボリル基は反応性が低かったが、これは立体障害に由来するものであり、嵩高いボリル基のクロスカップリングに有効なPd(PtBu3)2を触媒とすることで、置換基を導入することが可能であった。 また、ボリル化ペンタジエンと置換アルケンの反応では、非共役なボリル化1,5-ジエンが生成した。1,5-ジエンも他の方法による効率合成は困難であり、本手法によりアポトーシスを誘起する天然物ボンクレキン酸の形式合成に成功し、論文発表した(Organometallis, 41, 390 (2022))。 イミノアルキンとペンタジエン酸メチルの反応により形式的な(4+1)アニュレーションが進行し、多置換ピロールが生成する新反応を発見した(Org. Lett., 24, 2973 (2022))。この研究は日本経済新聞および日刊工業新聞で紹介された。 本研究で合成した共役ポリエン化合物は、電子材料への応用も期待される。本研究では共役ポリエニルフェロセンを合成し、π共役鎖が電荷移動に有効であること(N. J. Chem., 45, 14988 (2021))、およびヘテロアセンにπ共役鎖を結合したヘテロアセン類を合成し、紫外可視吸光、サイクリックボルタンメトリー、TD-DFT計算などにより物性評価を行った。(N. J. Chem., 46, 1003 (2022))
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