研究課題/領域番号 |
17H03052
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
長澤 和夫 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10247223)
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研究分担者 |
山中 正浩 立教大学, 理学部, 教授 (60343167)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有機触媒 / 不斉多様化反応 / 熱力学的パラメーター / 理論計算 / グアニジン |
研究実績の概要 |
一つの光学活性な触媒(一つのキラル源)から、生成物の両鏡像異性体をそれぞれ選択的に合成する不斉多様化反応は、それらの合成に必要な試薬・時間・エネルギーを大きく削減する。本研究では、我々がこれまで開発してきた、鎖状グアニジン有機触媒を用いた反応において、偶然発見した不斉多様化反応の知見を基に、新たにFriedel-Crafts反応に着目した触媒的不斉多様化型反応の開発、また開発した不斉多様化型反応を基盤とする生理活性物質の両鏡像異性体の効率的合成、をそれぞれ目的とした。 本触媒的不斉化反応では、反応における熱力学的パラメーターであるエントロピーとエンタルピーの寄与率が大きく関わっていることを見出している。 今年度はまず、前年度に確立した触媒の構造と熱力学的パラメーターに与える影響の解析に関する理論計算手法をもとに、新たな触媒を設計しこれらの触媒化合物を用いて触媒反応を行うことで理論計算の妥当性を検証した。触媒のデザインは、フレキシブルな側鎖に存在するキラル炭素上の置換基構造に着目して行った。合成した数種の触媒を用い、フェノール誘導体とイミンとのアザFriedel-Crafts反応を検討した。その結果、反応基質をより包み込むタイプの官能基ではエンタルピーの寄与率が、また立体障害的に働くタイプの官能基ではエントロピーの寄与率がそれぞれ高くなることがわかり、開発した計算の妥当性を確認することができた。また鎖状グアニジン有機触媒を用いた新規反応の探索も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、これまでに開発してきた鎖状グアニジン有機触媒を用いたFriedel-Crafts反応において、前年度に確立した触媒構造と熱力学的パラメーターへの影響に関する理論計算の手法について、その実験化学的にその妥当性を確証することができた。なお、実験的な確証検討を行う際に、一部の触媒化合物の合成に時間がかかったものの、概ね順調に合成することができ、これらを用いた触媒反応検討も実施することができた。一方当該触媒を用いた新規反応の探索も行った。その結果、これまで非常に困難とされてきた2置換型ナフトキノンに対する不斉反応の基礎的知見を得ることができた。本反応の不斉多様化を目指した研究の足がかりを得ることができた。研究計画は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度新たに探索した鎖状グアニジン有機触媒を用いる触媒反応について、不斉多様化の検討を行う。この際、これまでに確立してきた理論計算手法を活用する。 また反応開発に加え、新たな触媒系の探索を行う。これまで開発してきた鎖状グアニジン触媒のキラルスペーサー部について、シュードクラウンエーテル型の不斉官能基の導入を試みる。より大きなエントロピー効果が期待される。新たな不斉多様化反応触媒の開発に着手する。
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