研究課題/領域番号 |
17H03055
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小澤 文幸 京都大学, 化学研究所, 名誉教授 (40134837)
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研究分担者 |
脇岡 正幸 京都大学, 化学研究所, 助教 (50598844)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 直接的アリール化重合 / 混合配位子触媒 / 共役系高分子 |
研究実績の概要 |
1.混合配位子触媒を用い,2,2’-ビチオフェン(BT)とジフルオロベンゾチアジアゾール(BTz)誘導体およびナフトビスチアジアゾール誘導体(NTz)との共重合(直接的アリール化重合:DArP)を行い,高分子量のポリマー(poly(BT-alt-BTz)およびpoly(BT-alt-NTz))を高収率で合成した.得られたポリマーは,対応する右田-Stilleカップリング重合生成物(Stilleポリマー)と同様のNMRスペクトルを示し,ホモカップリングや分岐などの構造欠陥をほとんど含まないことが分かった.また,DArPポリマーは,Stilleポリマーとほぼ同じ光学的ならびに電気化学的性質を示した.さらに,DArPポリマーを用い,バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池を作製して評価したところ,その光電変換効率(PCE)はStilleポリマーと同等であることがわかった(PCEの最高値:9.2%).このPCEは,DArPで合成されたポリマーとしては現時点において最も高い値である. 2.高選択的な反応条件の確立を目的とし,DArPの繰り返し過程のモデルとなる1:1クロスカップリングを用いて,反応に及ぼす溶媒の影響を調べた.2-ブロモ-5-メチルチオフェンと2-メチルチアゾールを基質として,P(C6H4OMe)3を支持配位子として用いて調べた結果,溶媒の極性が低下するとともに反応性が向上した(THF < 2-MeTHF < ベンゼン).その際,クロスカップリング選択性は逆の傾向を示した(THF > 2-MeTHF > ベンゼン).また,選択性の低いベンゼン中の反応にTMEDAを添加することにより,クロスカップリング選択性が最も高くなった.以上のように,ベンゼンのような低極性溶媒とTMEDAとを組み合わせることにより,反応性と選択性を両立した優れた触媒系を構築できることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も前年度に引き続き,研究計画に挙げた三つの重点課題のうち,(1)混合配位子触媒の性能評価と,(3)基質適用範囲の拡大において顕著な成果が得られた.また,実際の電子デバイス(有機薄膜太陽電池)を作製し評価を行うことで,我々が開発を進めているDArP触媒の優れた重合制御能と材料合成における有用性を実践的に検証することができた.さらに,(2)混合配位子触媒による反応制御機構の解明についても,DArPのモデルとなる1:1クロスカップリングを用いて検討を行い,触媒副反応とその抑制手法に関する知見を得ることができた.このように,本研究は,当初の計画通り,順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,半導体材料として優れた特性を示すものの,C-H結合を多く含むためにそのDArP合成が難しいとされてきたポリマーを標的とする.具体的には,側鎖にチオフェン環を有するベンゾジチオフェンの誘導体をモノマーとして混合配位子触媒の性能を評価し,触媒の高性能化をはかる.また,合成したポリマーを用いて有機電界効果トランジスタや有機薄膜太陽電池を作成し,それらの性能評価を通してより実践的な観点からポリマー構造の高次制御法を開拓する.また,前年度に引き続き,直接的アリール化反応に伴う副反応の抑制法について検討する.本研究は順調に進展しており,研究計画に変更の必要はない.
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