研究実績の概要 |
1.ベンゾジチオフェン誘導体(BDT)とトリアゾール誘導体(BTz)の交互共重合体について,ホモカップリング欠陥が太陽電池特性に及ぼす影響を調べた.具体的には,混合配位子触媒を用いて合成した以下の3種類のポリマーについて,バルク-ヘテロ接合型有機薄膜太陽電池を作成し,その特性を比較した.まず,ほぼ完璧な交互共重合体と,2種類のうちの1種類のホモカップリング欠陥を含むポリマーを合成した(P1: ホモカップリング欠陥 <2%; P2: BDT-BDT欠陥 = 20%; P3: BTz-BTz欠陥 = 19%).続いて,太陽電池特性を調べたところ,BDT-BDT欠陥によって特性が低下するのに対し,BTz-BTz欠陥の影響は極めて小さいことがわかった.さらに,右田-Stilleカップリング重合生成物(P4: BDT-BDT欠陥 = 6%, BTz-BTz欠陥 = 8%)には,2種類のホモカップリング欠陥が相当量含まれているにも関わらず,その太陽電池特性はP1と同等であることがわかった.今後さらなる検討が必要ではあるが,BDT-BDT欠陥とBTz-BTz欠陥は,その影響を互いに打ち消し合うために,P1とP4は同等の特性を示すものと推定された. 2.混合配位子触媒を用いて,ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)の末端構造と分子量の制御について検討した.具体的には,末端修飾剤である2-フェニルチアゾール(PhTz)の存在下で,2-ブロモ-3-ヘキシルチオフェン(ThBr)を重合させた.その結果,PhTz由来の骨格が高い割合で末端に導入されたP3HTが得られ,その重合度(分子量)は,ThBrとPhTzの仕込み比と近い値になることがわかった.さらに,得られたP3HTは,直接的アリール化に反応活性なC-H結合を有しており,T字形のトリブロモアレーンとの反応でT字形のポリマーへと転化できた.
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