研究課題
酸塩基コンプレックスに基づく無水プロトン伝導性液晶の開発を行った。トリアジン系縮合剤である4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドを用いて、長鎖アルキル基を有する安息香酸誘導体と3-アミノプロパンスルホン酸とのアミド化反応を水酸化カリウム存在下、THF中で室温にて行ったところ、高収率でスルホネート基を有するアミド化合物が得られた。これらを陽イオン交換樹脂を用いて対応するスルホン酸誘導体へと変換した。スルホン酸誘導体は、単独でサーモトロピックカラムナー液晶性を示した。一方、塩基性分子であるイミダゾールとスルホン酸誘導体の複合体においては、イミダゾールが50モル%以下ではカラムナー液晶相が形成されたが、60および65モル%のイミダゾール複合体ではジャイロイド型双連続キュービック液晶相が形成されることがわかった。さらに、酸塩基コンプレックス形成によってプロトン伝導度が1000倍以上向上することを見出した。例えば、100度のキュービック相では10-4 S cm-1オーダーの無水プロトン伝導度が得られた。この結果は、プロトン化されたイミダゾールがプロトンキャリアとして機能したためと考えられる。また、高効率なイオン輸送のための液晶材料の設計指針を得るために、パーフルオロエチレンオキシド鎖を有するブロック構造分子や環状カーボネート基を有する液晶、多様なイオン性基をもつ光重合性液晶の開発にも成功した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画にしたがって、酸塩基コンプレックス形成に基づく無水プロトン伝導性液晶材料を構築することに成功した。特に、配向制御しなくてもプロトンチャンネルが三次元的に連結する双連続キュービック相を発現させることができた。また、イオン性重合液晶の光架橋によるイオン伝導高分子フィルムの開発に成功した。さらに、当初予定にはなかったパーフルオロエチレンオキシド鎖や環状カーボネート基を有するリチウムイオン伝導性液晶材料の開発およびこれを用いたリチウムイオン電池の構築にも成功した。これらの双極子ーイオン相互作用を駆動力として形成されるチャンネル構造は、プロトン化イミダゾールなどのプロトン性塩を溶解することができるため、新たなプロトン輸送場としての機能展開が期待される。
現在、酸塩基コンプレックスに基づく無水プロトン伝導性液晶と白金担持カーボン電極との接合体における発電特性を評価しており、有望な成果を得ている。今後は、液晶材料の膜厚、分子配向、および電極材料との接触抵抗が電流密度と電圧に及ぼす効果を詳細に検討し、より高性能な燃料電池の開発を目指す。
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