研究課題/領域番号 |
17H03065
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
山本 勝宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30314082)
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研究分担者 |
高木 秀彰 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別技術専門職 (10720261)
清水 伸隆 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 准教授 (20450934)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 斜入射小角X線散乱 / 蛍光X線分析 / テンダーX線 / 薄膜 / ブロック共重合体 / 吸収端 |
研究実績の概要 |
テンダーX線領域の斜入射小角X線散乱(GISAXS)法による高分子薄膜の構造解析実験において、蛍光X線分析が可能となるシステムの構築を目指し、本年度末で装置の設置、動作確認を行った。硫黄元素を含有する系のモデルとして、ポリ(オクタデシルチオフェン)薄膜を作成、そのGISAXS測定とともに蛍光X線データの取得を行った。硫黄音吸収端近傍のX線エネルギー(2.45keV)を用いたGISAXS測定を行い、その簡易解析により、硫黄部位のコントラスト変化に追随して、散乱強度が変化することを確認した。これによりオクタデシル鎖が占める領域の電子密度を定量的に評価できることが期待出来る結果が得られた。一方、ハードX線(7-14keV)領域でのGISAXS測定による薄膜構造解析においては、臭素化ポリマーを用いることで、ブロック共重合体・臭素化ポリマーブレンド系において、臭素化ポリマーの分布状態の解明を精度よく行えることを確認した。薄膜中のミクロ相分離構造は垂直配向したシリンダードメインが六方最密充填した自己組織化構造を形成し、臭素化ポリマーがそのシリンダードメインとマトリックスの界面に偏析することを突き止めた。さらに薄膜の膜厚み方向に対する深さい分解構造解析の可能性を見出し、空気表面欽慕では垂直配向シリンダー以外に、平行配向シリンダーが存在することを明らかにし、基板近傍では垂直配向が支配的であることを明らかにした。深さ分解能はテンダー領域では数十nmオーダーであるのに対し、上述のハードX線では、臭素の量に依存するが、サブマイクロからマイクロメートルオーダーの分解能で解析が可能であることを示唆する結果を得た。これらにより得られた結果を学術論文に投稿するに至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って、装置設備を進め、同時進行で薄膜構造解析を遂行してきた。その結果を一部をいくつかの学術論文に投稿できる段階にある(一つは投稿中)。次年度の研究計画に向けての実験計画も立てられ、研究計画に上げた成果が得られる目処が立った。
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今後の研究の推進方策 |
多成分混合系薄膜(有機、無機、金属など)の表面近傍から内部方向への空間的構造不均一性を観察する手法を確立し、薄膜の構造形成機構の解明とその構造と機能の相関解明を目指す目的で、以下の二つに絞って研究を進める。 1)ハードX線領域において、ブロック共重合体薄膜でそのミクロ相分離構造が高度に配向する試料を用いる。特に塩化鉄および臭化鉄を含む有機複合膜において、相分離構造が特定方向に配向し、金属塩が含まれない膜では、相分離前年度までに設置したシステムの調整から始め、調整確認後、多成分複合系の有機薄膜の構造解析を進める。本年度は臭素元素を含んだ高分子(ブロック共重合体)薄膜において、配向状態が表面近傍と内部において全く異なることを見出した。臭素を含有した試料において、X線の波長を臭素吸収端に合わせることで、斜入射小角散乱法では試料の膜厚方向の対する深さ分解構造解析が可能となるので、その膜厚方向の構造の配向不均一性解析を確立する。これによって薄膜内部の構造配向メカニズムを議論できると考える。 2)テンダーX線領域の実験においては、蛍光X線分析が可能となるシステムの構築ができたので、硫黄を含有する系としてゴム材料(加硫)や有機薄膜太陽電池(ポリチオフェンなど)が実用材料として重要であることから、これらを用いる。これらの系における硫黄元素が試料中どのように分布しているか、また各々の空間でどのような化学状態にあるかを知ることは極めて重要であり、それらの情報は材料性能に直結する。テンダー領域のGISAXS実験では、深さ方向に対する構造の不均一性を議論が可能である。さらに硫黄元素の吸収端近傍での斜入射異常小角散乱法(GIASAXS)やXRFとの組み合わせで基板近傍から表面近傍へと構造の相違、標的元素の化学状態、分布状態を議論、薄膜中での化学反応追跡(その場観察)を検討する。
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