研究課題
本研究では、生体組織透過性の高い近赤外光を用いて、光熱変換効率の高いフラーレン類により発熱を誘起することで、感温性ポリマーの親・疎水性を変化して薬剤の制御放出を行うことを目的とする。フラーレンを水に可溶化するため、フラーレンとのコンプレックス形成を既に確認している生体適合性で側鎖にホスホリルコリン基を持つポリマー(PMPC)を用いた。さらに、低温で水に溶解しないが、昇温により水に溶解する上限臨界溶液温度(UCST)挙動を示す側鎖にウレイド基を含むメタクリレート型ポリマー(PUEM)のブロックと、生体適合性で水溶性のポリ(エチレングリコール)(PEG)ブロックから成るトリブロック共重合体(EUM)を制御ラジカル重合法により合成した。フラーレン類のC70とEUMの粉末を乳鉢中で混合して、少しずつ水を加えて溶解し、遠心分離とろ過で精製することで、水溶性のC70/EUMコンプレックスを作製した。このコンプレックスは、コアがPMPCとC70による会合体で、その周囲を感温性のPUEMシェルが覆い、最外層を生体適合性で親水性のPEGコロナ鎖が覆った形状となる。C70/EUMコンプレックス水溶液に近赤外光を照射すると水温が上昇することを確かめた。さらに、昇温に伴いコンプレックスの粒径の増加が観測された。C70/EUMコンプレックス水溶液の温度上昇に伴い、UCSTを示すPUEMブロックが水和して、シェル層の厚みが増加したと考えられる。さらに、C70/EUMコンプレックスのシェル層のPUEMに、室温で抗がん剤のドキソルビシン(DOX)を取り込ませた。この状態でPUEMのUCST以上の温度に昇温すると、DOXの制御放出されることを確認した。以上の結果からC70/EUMコンプレックスは、近赤外線または昇温で内包薬物を制御放出可能な薬剤キャリアとしての応用が期待される。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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