研究実績の概要 |
本研究は,可逆的な電荷授受席を高密度に凝縮させた非晶質ポリマーにおける電荷の輸送・貯蔵過程を基礎的に追究し,高分子のレドックス双安定性に関する一般性ある概念を導出することを目的として展開した。これまでの成果を基盤に,本年度 (第4年度) は,電荷の高密度貯蔵,高速充電を可能とする電位駆動メディエータ,ポテンシャル勾配による電荷輸送制御など多様な実例に展開し,レドックス双安定性に特徴づけられた機能性高分子の一群として定着させた。さらに,有機活物質として働くポリマーを,レドックス席の構造制御と電荷貯蔵過程における電子・イオン輸送の解明により具体化し,複合電極の構造制御に立脚した高速輸送性を,多様な電荷蓄積形態の実証を経て超高密度有機活物質の創出へと繋げる道筋に沿って,斬新なエネルギー変換物質として確立した。 具体的には,項目「高密度エネルギー貯蔵物質の創出」に焦点を当てて推進し,特に,高い電荷貯蔵密度を与えた一連のn型(すなわち電気的中性分子からポリアニオンを与える)ポリマーを用いて,有機Liイオン電池の電極構成による高密度エネルギー貯蔵を実現した。ポリマーの繰返し単位の分子量Mを低く抑え,電位を指標に起電力Uを高めることによって重量エネルギー密度(= nFU/Σ(M))を増加させた。 次いで,ポリビニルフェナントレンキノンなどの高密度n型活物質を正極活物質とした有機Liイオン電池の構成 ( -)Li|LiTFSI, EC/DEC|PVPQ/C(+) で,蓄電に関わる反応種がLiイオンと有機ポリマーのみであることを明確にし (Σ(M) = fw(Li + M)),導電助剤の含量を抑えた複合電極で高いエネルギー密度を引き出せることを明らかにした。これにより,ロッキングチェア型電荷補償によるn型電荷蓄積を担うポリマーで高電圧且つ高容量特性を備えたポリマーの一群を創出した。
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