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2018 年度 実績報告書

近赤外吸収スイッチ金属錯体を光熱変換プローブとするがんのセラノスティクス

研究課題

研究課題/領域番号 17H03073
研究機関東北大学

研究代表者

壹岐 伸彦  東北大学, 環境科学研究科, 教授 (50282108)

研究分担者 鈴木 敦子 (升谷敦子)  東北大学, 環境科学研究科, 助教 (10633464)
唐島田 龍之介  東北大学, 環境科学研究科, 助教 (40783303)
西條 芳文  東北大学, 医工学研究科, 教授 (00292277)
高橋 透  福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (30361166)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードセラノスティクス / イメージング / 光熱治療 / 近赤外吸収プローブ / 白金錯体 / ジラジカル / デリバリー / スイッチング
研究実績の概要

1. プローブ設計・機能評価:前年度までに合成したo-フェニレンジアミンをプロピレンリンカーで連結したPt(II)錯体について,その安定性の一層の向上を目指し,エチレンブリッジを検討した.ところが生成物は次第にリンカーを脱離したジラジカル錯体Pt(DABS)2 (DABS = o-iminosulfobenzosemiqunonato)に変換されることを発見した.一方,レーザー波長適合性に関して,一方をフェニレンジアミン,もう一方をアミノフェノールとした非対称錯体を合成したところ,吸収帯が818 nmまで超波長化することを見出した.
2. 送達システム開発:3,5-ジブロモ-1,2-ジアミノベンゼン(Br2DAB)を配位子とする疎水性のPt(II)ジラジカル錯体を細胞に導入するには,その水溶性の確保が課題である.そこでアルブミン(BSA)による可溶化を検討した.錯体に対しBSAを2倍モル量添加し可溶化した.これを含む培地でMCF-7細胞を培養することで錯体を導入することができた.BSAと錯体の量論比を変化させて導入量を評価した結果,BSAは錯体の可溶化と細胞導入のキャリアとして機能していることがわかった.
3. 生体内プローブ機能評価:項目2で得られたジラジカル錯体を導入した細胞について,NIR吸収顕微鏡像を取得した.オルガネラ染色の結果と照合し,錯体は細胞質に存在していることがわかった.
4. 光熱効果の評価:項目2で得られた錯体の水溶液について10分間のレーザー光(730 nm, 5 W/cm2)を照射したところ10分で温度が44℃上昇し,光熱効果を示した.錯体を導入した細胞にNIR光を照射したところ光熱効果によって細胞を殺傷できることを確認した.これにより光熱治療の可能性が示された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

下記項目1についてはやや進捗が遅れたものの,項目2~4については予想以上に順調に進捗した.総合して概ね順調と判断した.下記に詳述する.
1. プローブ設計・機能評価:上記で記した錯体の精製に手間取り,速度論的安定性と光音響測定のための吸収波長の双方を満足するプローブの合成に至らなかった.
2. 送達システム開発:アルブミンが優れた送達キャリアとして働くことは申請当初では予想できなかった良好な成果である.
3. 生体内プローブ機能評価:上記6項目2で得られたジラジカル錯体を導入した細胞について,NIR吸収顕微鏡像を取得し,細胞内局在を明らかにした点は順調であると言える.
4. 光熱効果の評価:上記6項目4で示したように,本錯体がin vitro, in cellで優れた光熱効果を示すことが実証された.

今後の研究の推進方策

下記項目1については進捗の遅れを取り戻す.項目2~4については順調に進捗したので,次年度より広範ないし詳細な検討を施す.
1. プローブ設計・機能評価:速度論的安定性と光音響測定のための吸収波長の双方を満足するプローブの合成に早速着手した.本反応はo-フェニレンジアミン系で経験済みのものであり,ナフタレン環配位子でも同様に適用できると予想している.
2. 送達システム開発:申請時に提案していたミセルなどナノキャリアに範囲を広げて検討する.
3. 生体内プローブ機能評価:より詳しい細胞内での位置を調べる.また光音響顕微鏡像取得に挑戦する.
4. 光熱効果の評価:他のキャリアを用いた系について調べる.またin vivoレベルでの光熱効果を評価する.

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Speciation of Chromium2019

    • 著者名/発表者名
      Nobuhiko Iki
    • 雑誌名

      Analytical Sciences

      巻: 35 ページ: 1-2

    • DOI

      10.2116/analsci.highlights1901

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] Silver Nanoparticles2018

    • 著者名/発表者名
      Nobuhiko Iki
    • 雑誌名

      Analytical Sciences

      巻: 34 ページ: 1223-1224

    • DOI

      10.2116/analsci.highlights1811

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 光熱療法への応用を志向したジラジカル白金(II)錯体の光熱効果2019

    • 著者名/発表者名
      澤村瞭太、佐藤将貴、鈴木敦子、伊野浩介、珠玖仁、壹岐伸彦
    • 学会等名
      日本化学会第99春季年会
  • [学会発表] イメージングとがん治療を志向したランタニドーチアカリックスアレーン錯体内包シリカナノ粒子の創製2019

    • 著者名/発表者名
      大和谷匠、唐島田龍之介、伊野浩介、珠玖仁、壹岐伸彦
    • 学会等名
      日本化学会第99春季年会
  • [学会発表] 六価クロムと1,5-ジフェニルカルバジドとの錯形成挙動の解明2018

    • 著者名/発表者名
      田首裕一朗、 壹岐伸彦
    • 学会等名
      第78回分析化学討論会
  • [学会発表] π共役系を拡張した白金(II)ジラジカル錯体のpH応答近赤外吸収スイッチング2018

    • 著者名/発表者名
      鈴木敦子、土屋智資、佐藤将貴、壹岐伸彦
    • 学会等名
      第16回ホスト-ゲスト・超分子化学シンポジウム
  • [学会発表] 診断・治療への展開を志向した多機能性金属錯体の創製2018

    • 著者名/発表者名
      壹岐伸彦
    • 学会等名
      第28回金属の関与する生体関連反応シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 光音響プローブとしての応用を目指した白金(II)ジラジカル錯体の吸収波長の長波長化と近赤外吸収スイッチング挙動の検討2018

    • 著者名/発表者名
      土屋智資、佐藤将貴、鈴木敦子、壹岐伸彦
    • 学会等名
      第28回金属の関与する生体関連反応シンポジウム
  • [学会発表] ランタニドー三脚型シッフ塩基錯体における配位環境とランタニド発光の調査2018

    • 著者名/発表者名
      神戸貴史、 山岡由和、 五十嵐盟、 鈴木敦子、 唐島田龍之介、 壹岐伸彦
    • 学会等名
      第68回錯体化学討論会
  • [学会発表] Cellular Uptake and Photothermal Effect of Near-Infrared Absorbing Diradical-Platinum(II) Complex2018

    • 著者名/発表者名
      澤村瞭太、 佐藤将貴、 鈴木敦子、 伊野浩介、 珠玖仁、 壹岐伸彦
    • 学会等名
      43rd International Conference on Coordination Chemistry
    • 国際学会
  • [学会発表] Preparation of luminescent materials with a water-soluble terbium(III)-thiacalix[4]arene complex2018

    • 著者名/発表者名
      白石成美、壹岐伸彦
    • 学会等名
      isCEBT2018
    • 国際学会
  • [学会発表] 診断・治療への展開を志向した多機能性金属錯体の創製2018

    • 著者名/発表者名
      壹岐伸彦
    • 学会等名
      日本分析化学会第67年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 異核ランタニド-チアカリックスアレーン錯体の選択的合成とキャピラリー電気泳動による形成評価2018

    • 著者名/発表者名
      武者洸貴、唐島田龍之介、壹岐伸彦
    • 学会等名
      SCE2018
  • [備考] 壹岐研究室ホームページ

    • URL

      https://sites.google.com/site/hoshlab/

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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