液体クロマトグラフィー分析の動作温度を上げることで分離効率と速度が向上するという現象とその原理はよく知られているが、従来の方法では溶媒の蒸発と沸騰の原因で、最高動作温度は約90度に制限されている。我々は高圧エレクトロスプレーイオン源を用いて新しい高温・高速キャピラリー液体クロマトグラフィ質量分析(capillary-LC-MS)システムを開発した。大気圧より高い高圧イオン源を用いることで、溶媒の沸騰問題が解決され、イオン化の安定性と分析の動作温度が160 度まで向上した。システム構成には市販の液体クロマトグラフィー ultra-HPLCシステム(Shimadzu Nexera)と高圧高温エレクトロスプレーイオン源が含まれている。分析に使われているキャピラリーカラムの動作温度を常温から200度まで精密に制御できる加熱装置を作製した。イオン源圧力は最大30気圧、最高温度が250度までに安全に作動できるように設計・作製した。実施した検証実験で耐熱のカーボンカラム(Thermo社製 graphitic carbon)と樹脂系カラム(ProSwift RP-4H)は高温高速分析に適することが分かった。開発したシステムに用いて、タンパク質のcapillary-LC-MS分析を1分以内で実現することが成功した。それら検証成果を招待講演、国際学会と学術論文誌に発表した。
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