研究課題/領域番号 |
17H03077
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
北川 慎也 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50335080)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 質量分析 / 液体クロマトグラフィー / 並列分析 |
研究実績の概要 |
周波数分割多重化法を利用する並列導入型質量分析法開発の基礎検討として、まずは2系統のイオン源をMSへ並列導入する方法開発を行い、今後の並列導入を行う際の干渉を低減されるために不可欠な知見を得ることを目的として研究を行った。 これまでの研究でMSの導入孔に複数のイオン源を設置した場合、物理的干渉が生じることが判っている。この問題を解決するために、複数の試料導入孔を有するインターフェイスの開発として、イオン源間距離を大きくしたインターフェイスの開発を行った。まずは簡便なインターフェイスとしてY字型インターフェイスを開発した。Y字型インターフェイスに対して、チョッパーによる物理的遮蔽による周波数情報付与を行ったところ、局所的圧力変動による干渉が生じることが明らかとなった。そこで、圧力変動の伴わない周波数情報付与システムとして、電圧印加による静電遮蔽について検討を行った。静電遮蔽を用いることでイオン源間の干渉のないデータを得ることに成功した。また、今後接続するイオン源の数を増加するためには、イオンファンネルを用いるインターフェイスの開発を行うことが有効であると考えられる。そのため、アインツェルレンズ型・イオンファンネル型インターフェイスのプロトタイプの開発を行った。 今回開発する並列導入型質量分析では、試料導入時に周波数情報の付与を行うことが重要である。本研究では、フーリエ変換による周波数解析が手法の基礎となっている。付与している信号は正確な正弦波ではくても周波数解析に問題が生じないことを確認した。また、復元されたクロマトグラムの信号強度に関する検討も行い、元の信号強度を得るための補正技術についても開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度目的としていた、2系統のHPLCを接続したMSにおいて、MSで観測される混合シグナルから、干渉なく各HPLCに相当するクロマトグラムを得ることに成功している。そのための、要素技術である、1)複数導入功を有するインターフェイス、2)周波数譲歩付与装置、3)信号処理方法について予定通り研究を進めることができている。 本研究の基礎となる、2系統のHPLCを接続したMSについて多くの学会発表を行い、複数の受賞を得るなど高い評価を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの「二台のLCと一台のMSを接続する2LC-1MS」の研究において、MSで観測される混在信号から任意のLCに由来するクロマトグラムを抽出することに成功した。この研究をさらに推進し、2系統の信号分離をより安定的に行うことができるシステムの開発を進める。さらにこの研究で得られた知見を基に、安定的な並列導入が可能であるチャンネル数を3系統以上に増やす。多系統システムの構築においては、空間的な自由度が低減する可能性が高いが、イオン源(および周期性付与システム)の小型化を図り、干渉が起きないようにインターフェイスの改良を行う。 また、これまでは信号処理にフーリエ変換を用いていた。近年、様々な研究分野で用いられているウェーブレット変換では、周波数要素に加えてその信号がどの時間(時間要素)に観測されているかも解析することができる。従って混合クロマトグラムをウェーブレット変換することで、時間・周波数・信号強度のデータを得ることができるため、フーリエ変換よりも高度な信号処理が可能になると考えられる。30年度は、ウェーブレット変換を用いた解析方法の有効性について検討を行う。
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