研究課題/領域番号 |
17H03081
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研究機関 | 埼玉工業大学 |
研究代表者 |
丹羽 修 埼玉工業大学, 先端科学研究所, 教授 (70392644)
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研究分担者 |
加藤 大 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (80533190)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 電気化学 / ナノアロイ / ヘテロジャンクション / メッキ / オリゴ糖 / アルコール類 / スパッタリング |
研究実績の概要 |
本研究では、オリゴ糖などの分子量の高い糖類に強い触媒的な酸化反応を行う半コアシェル構造の合金ナノ粒子が埋め込まれたナノカーボン薄膜電極の開発を目的とする。具体的には、アンバランストマグネトロンスパッタ法を用いて、金属とカーボンを共スパッタし、金属ナノ粒子が埋め込まれたカーボン薄膜を形成後、メッキ時の過電圧の差を利用して異種金属をナノ粒子電極上のみ析出させることで半コアシェル状の構造を形成した後、オリゴ糖類で電極の触媒活性を評価する。平成30年度は、下地の金属ナノ粒子をパラジウムと金の二種類に、メッキを行う上層の粒子をニッケルとして検討を行った。TEM観察等により、2種類の金属は、コアシェル構造よりむしろ2種類の金属の一部が接合したヘテロジャンクション構造を取っていることが分かった。また、単独のナノ粒子やバルク金属に比べて糖類に対する酸化電流と安定性が高いことを確認した。またオリゴ糖類を含む糖試料の一括検出のため、逆相の高速液体クロマトグラフィーと電気化学検出器により移動相などの分離検出条件を検討し、5種類の糖を明確に分離できる条件を把握できた。更なる活性向上を目指してカーボンマトリックスの検討を行い、窒素を含むカーボン膜の形成と電気化学評価を行った。その結果、カーボン膜中の窒素を含む置換基がピリジン構造の方がより電気化学活性が高く、酸素過電圧の低下、いくつかの有機化合物の電気化学酸化時のピークが低電位側にシフトするなどの知見が得られたため、論文投稿を行った。一方、作製した2種類の金属が接合した電極は、糖類だけでなく高濃度のアルコールの電気化学的な酸化に対して、従来の単一金属ナノ粒子の電極や金属バルク電極に比べて明確に高い活性が観測された。今後の展開が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度見出した金とパラジウムナノ粒子上にニッケルをメッキすることでオリゴ糖に対する高い触媒電流に関しては、更なる大きな活性向上は実現できていないが、電極を高速液体クロマトグラフィーに組み込み、糖類の分離条件を検討し、各ピークが明瞭に分離し、シャープなピークが得られる条件を把握できた。また、この構造がアルコール類に対して高い活性を示す新たな結果が得られたことや、マトリックス効果による活性向上を目的として、窒素が含まれるカーボン薄膜を形成しその特性を把握するなどの知見が得られたので、総合的にみて、順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、金あるいは、パラジウムナノ粒子が埋め込まれたカーボン膜にニッケルメッキを行い、2種類の金属が接合されたナノ粒子が埋め込まれたカーボン電極により、糖類とアルコール類の酸化電流の向上、オリゴ糖を含む糖類の高速液体クロマトグラフィーによる分離条件把握などを達成した。2019年度は、作製した電極を検出器に用いてオリゴ糖を含む糖類で検出限界、ダイナミックレンジなどの特性を把握すると同時に2018年度に発見した高濃度のアルコール類に対する高い酸化特性に関してメカニズムの把握など原理解明を行う。更に含窒素カーボン膜とナノ粒子を組み合わせカーボンマトリックの効果による活性向上についても検討する。
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