研究課題/領域番号 |
17H03088
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川井 清彦 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50314422)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | DNA / 高次構造 / 1分子計測 / 蛍光 / blinking / 蛍光相関分光 |
研究実績の概要 |
DNAは様々な高次構造を形成し、細胞内の遺伝子発現の調節を通して種々の疾患と関連していることが示唆されている。高次構造転移はタンパク質との相互作用をトリガーとして、過渡的にダイナミックに起こると考えられるが、有効な観測手法が存在せず機構の多くは不明である。応募者は、蛍光分子1つ1つを見たときに顕著となる蛍光点滅現象(blinking)の理解・制御・活用に基づいた1分子レベル分析・診断法の開発を進めてきた(Kinetic Analysis based on the Control of the fluorescence Blinking: KACB法)。本課題では、KACB法の改良により、貴重な生体試料を用いたDNA高次構造転移の1分子観測法を確立し、未解明のDNA高次構造転移ダイナミクスに挑む。2017年度、2018年度は、DNA高次構造転移を、より長い時間追跡可能とするため、観測機器の改良・更新を行った。DNAをガラス基板上に固定し、酸化還元を利用したredox KACB法(rKACB法)を用いて、モレキュラービーコンタイププローブにおける、DNAのヘアピン-2本鎖状態の構造の1分子レベルでの読み分けに成功した。これは同時に、たった1つのDNAを検出する活気的な技術開発の達成を意味する。本系を、構造転移を引き起こし機能することがわかっている機能性RNAであるpreQ1リボスイッチのダイナミクスの測定に応用した。preQ1の構造転移速度の測定に始めて成功し、preQ1分子存在下で速度が変化し、構造転移の平衡が変化することをわずか40分子の測定により明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度、30年度の研究において、目標であるDNA構造の1分子読みわけ達成し、たった1分子のDNAを検出する新技術の開発に成功した。また、RNAを対象として、構造転移速度の1分子観測に成功した。当初の計画以上の素晴らしい研究成果が得られたが、blinkingの起こる時間の最適化に時間を要し、結果的に29年度の研究を30年度に一部繰り越すことになったため、「(2)おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年の研究では、KACB法を様々なターゲットに応用可能とするため、その基礎を固める。具体的には、種々の蛍光分子、種々の酸化剤を用いたrKACB法を確立する。確立した手法を用いて、核酸2本鎖のA型⇔B型構造の読みわけ、そして、抗原-抗体反応の1分子検出に取り組む。
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