研究課題
基盤研究(B)
固体核磁気共鳴(固体NMR)法について近年、不対電子を安定に保持する常磁性化合物を試料に混入し、核スピンの緩和を意図的に増進することで感度向上や長核間距離測定につなげる技術が発展したが、信号取り込み期にも常磁性が残ることから、いくつか重大な問題も抱えていた。本課題では過渡的常磁性分子の磁性を励起光のオンオフで高速にスイッチする新しいアプローチを開拓し、これらの問題が解決可能であることを示した。これは膜蛋白質を含め広い応用を拓く基盤技術となる。
固体核磁気共鳴分光
本課題では励起光のオン/オフによってRFパルス列実行中とFID取り込み中で、試料に混入した分子の磁性を高速に切り換え利用する実験法を開発し、複数の機能性化合物(色素)を見出した。これは従来法の主要な欠点を克服する最初の例であり、分解能低下の心配なく感度を増強でき、また修飾残基の根元を含めた短距離から長距離情報までの核間距離情報を残さず取得できる手法の基盤となる。試料調製の面での要求も軽減するので、発現困難な試料、複合体試料の構造研究の新発展を推進する潜在能力がある、重要な基盤技術である。