研究課題
金属有機構造体の一種であるCa錯体([Ca(C4O4)H2O]n)に着目し,その水吸着に伴う構造変形ならびに水同位体の分子認識能の発現を水同位体吸着実験(吸着等温線・in situ 粉末X線回折(XRPD)測定)および理論計算によって検討した。Ca錯体は,Ca原子に水分子(c-H2O)が化学的に吸着したフレームワーク構造を有しており,そのフレームワーク中の1次元チャンネルには,水分子を物理吸着(p-H2O)することができる。In situ XRPD測定によって得られたCa錯体(p-H2O+c-H2O)のa軸およびb軸方向の格子定数(300 K)は,化学吸着水のみからなるCa錯体(c-H2O)よりも小さくなることが分かった。p-H2Oの存在によってCa錯体の格子定数が減少する原因としては,p-H2Oがc-H2Oと水素結合を形成し,c-H2Oに配位するCaイオンに対して,1次元細孔の中心軸に垂直な方向への引力を発生するためと考えられる。そこで,ab initio MD計算(CP2K)を実施したところ,p-H2Oとc-H2Oにおける水素結合の形成を支持する結果が得られた。さらに,in situ XRPD測定によると,D2Oが物理吸着したCa錯体(p-D2O+c-H2O)の格子定数はCa錯体(p-H2O+c-H2O)よりも大きくなり,この現象は経路積分ab initio MD(i-PI + CP2K)によって再現できることが分かった。このことは,Ca錯体が水同位体分子の認識能を持つことを示唆しており,その理由としては,D原子の位置不確定性に起因する量子効果がH原子よりも小さいD2Oについては,Ca錯体との相互作用よりも細孔内におけるD2Oの一次元鎖の形成が優先されるためと考えられる。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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