研究課題/領域番号 |
17H03100
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小澤 正邦 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (30252315)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自動車排ガス / 三元触媒 / 酸素貯蔵能 / セリアジルコニア / 白金族 / 希少金属低減 / エンジン排気 |
研究実績の概要 |
エンジン等の動力源、特に各種自動車等の移動源での排ガス浄化処理において、希少金属の使用量ならびに資源負荷を低減した高効率浄化触媒技術の実現のための研究を行っている。排ガス浄化触媒の希少元素使用量当たり高活性化の可能性を、利用するナノ材料の設計の観点から追求した。2019年度に以下の研究を行った。1.貴金属/複合化セリアジルコニア系の三元触媒の作製、2.ナノ粒子微細構造解析とXAFS等による分析、3.低減化の効果、浄化触媒性能、耐久性試験による評価、5.ディーゼル粒子排出物(PM)燃焼特性、6.金属(Pt, Pdほか)ナノ粒子ならびにCeO2‐ZrO2の合成法、7.ナノ粒子単独の特異な物性(水素相互作用)、8.金属ガラスからの材料組織制御と三元活性評価。白金族やその合金系のナノ粒子の利用と高分散化および貴金属と担体との相互作用の最適化のため、Pd、Ptおよびそれらの合金系粒子の合成法を検討した。10nm以下で粒径を制御できる作製条件を確立した。基礎特性として水素との相互作用をTPR、PCT評価により行い、ナノ化による特異な水素化物生成現象を見出した。遷移金属類を活用した複合化した触媒設計については、アルミナ担体を有効に活用して、これらの三元活性を評価し、白金族低減のための遷移金属利用の効果を検討した。貴金属/セリア/ジルコニア系触媒の基礎研究としてモデル化したナノ粒子/基板系触媒の作製と評価を行った。また、敏速な還元現象を検討し高活性化のためのSMSI効果の最適化を目指した。複合担体触媒によるディーゼル粒子排出物(PM)燃焼特性を検討して、少量Ag(~1wt%以下)添加ならびに酸化状態の影響を見出した。あわせて、物理的な手法によるその場観察で触媒反応評価を行っている。これらの研究推進によって、従来よりも白金を10分の1程(0.1wt%以下)に低減した排ガス浄化触媒の実現に向けて、有効な結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で提案したコアシェル型担体を用いた貴金属/セリア系触媒およびさらに組織制御により複合化を行った触媒材料の作製と微細構造解析を行った。白金触媒粒子(約1 nm)を安定に維持しており効率的な貴金属利用の材料的な基礎を確認した。さらに、貴金属の状態の解析として白金、パラジウム、ロジウム触媒のXAFS測定を行い、ナノ化や合金化にともなう構造変化を種々の反応耐久後において調べ、金属とその酸化状態の制御が重要であることが分かった(金属種でその最適状態は異なる)。低減化の効果を具現した微細構造の設計と精密化するためには、ナノ粒子の利用が適当であり、その複合化プロセスが重要であった。そこで、モデル化材の基板上の分散、さらには薄膜コート技術へも展開して、それらの作製技術を確立した。白金およびパラジウムナノ粒子とその合金化ならびに複合化したナノ粒子を作製した。これらを用いるバイメタリック触媒のCO酸化、三元浄化触媒、水素の相互作用に関する研究を行った。さらに、ディーゼル粒子排出物(PM)燃焼特性を評価し低温でのPM燃焼効果を見出して、PMのトラップ及び燃焼効率化のための触媒材料の複合形態を検討した。これらの研究推進によって、従来よりも白金を10分の1程度に低減した排ガス浄化触媒の実現に向けて有効な結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
触媒材料技術の開発により得られた成果から、ナノ粒子の特性を活用した金属、金属酸化物、基体等を組み合わせ、さらに貴金属を有効利用(低減)した排ガス浄化触媒を作製して、性能の向上効果をねらった各種条件等での制御性、性能評価にむけて研究を推進する。金属酸化物担体のナノ複合化技術のさらなる精密化、とくに白金族やその合金系のナノ粒子の利用と高分散化検討、遷移金属類を活用した複合化した触媒設計と評価を継続する。貴金属と担体との相互作用の最適化のため、モデル化したナノ粒子/基板系触媒作製と評価を行う。また、ナノ粒子によるPM燃焼触媒性を評価して設計技術(部品化)に結び付け、また解析技術(その場TEM等)を追加的に検討する。これらをまとめ、希少金属の使用量、資源負荷を低減した高効率浄化触媒技術の開発に結び付ける。
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