研究課題/領域番号 |
17H03104
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡本 敏宏 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (80469931)
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研究分担者 |
橋爪 大輔 国立研究開発法人理化学研究所, その他, 研究員 (00293126)
石井 宏幸 筑波大学, 数理物質系, 助教 (00585127)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | パイ電子系材料 / 有機半導体 / 分子間振動 / 高移動度 / 分子軌道形態 |
研究実績の概要 |
本研究では、有機半導体の移動度の低下の主原因である「分子間振動」の抑制を本提案の基軸とし,申請者独自のアプローチである分子形状に加えて、「分子軌道形態」を制御することにより高移動度有機半導体の開発と学術基盤の構築をを目指している。以下に、本年度に取り組んだ内容を項目毎にまとめた。 新規屈曲型誘導体の合成:初年度は、まず、鍵前駆体である官能基置換硫黄架橋W字型およびZigzag型誘導体(第2世代屈曲型分子群)からアルキル基およびアルキルフェニル基を導入した誘導体合成を各種カップリング反応を用いて行った。得られた一連の化合物は再結晶法、昇華精製法、独自に開発した精製法を組み合わせることで、デバイス評価可能なサンプルを調製し、単結晶作製、安定性評価および熱的挙動解析、移動度評価用として用いた。また、2年度に合成予定であった新規Zigzag型誘導体(第3世代屈曲型分子群)の合成検討も行ったところ、新しい合成法の開発に成功し、当初の計画以上の進展があった。 得られた誘導体の基礎物性評価・単結晶および粉末精密構造解析・伝導計算:溶液法もしくは物理気相輸送法を用いて、高品質な単結晶の作製とそれを用いた単結晶構造解析を行った。得られた誘導体はすべて二次元伝導に有利なヘリングボーン型集合体構造を形成することがわかった。得られた結晶構造情報を用い、バンド計算により有効質量を算出した。また、得られた誘導体の移動度の評価を、塗布結晶化法で作製した単結晶を用いたトランジスタにて行った。有効質量および移動度評価の結果からでは説明ができない傾向が見られ、分子間振動の抑制による移動度の向上が示唆された。2年次以降で、単結晶、粉末および薄膜構造解析などを行い、分子間振動と移動度の関係を詳細に調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2年度に合成予定であった新規Zigzag型誘導体(第3世代屈曲型分子群)の合成法の開発に成功し、当初の計画以上の進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
2年度以降で、まず、得られた一連の屈曲型誘導体について、分子の動的挙動を明らかにするために、単結晶、粉末および薄膜による温度可変精密構造解析に取り組む。また、高品質な単結晶を育成し、温度可変単結晶精密構造解析にも取り組み、分子の動的挙動をさらに深く理解する上で重要な温度因子を算出し、分子設計の確からしさを十分に検証する。得られる知見に基づき、初年度に確立した第3世代屈曲型分子骨格へ側鎖の導入の検討を行う。これまでと同様に、得られる誘導体について基礎物性評価、構造解析、伝導計算およびデバイス評価も系統的に行う。
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