研究課題/領域番号 |
17H03106
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
早瀬 修二 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (80336099)
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研究分担者 |
沈 青 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50282926)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ペロブスカイト / 鉛フリー / 太陽電池 / キャリア密度 / レドックス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は鉛フリーペロブスカイト太陽電池の高効率化指針の提案であり、より詳細には錫ペロブスカイトを用いた太陽電池の高効率化指針を提案することである。錫ペロブスカイト太陽電池の欠点は錫の二価が酸化されて錫の四価になることである。その結果キャリア密度が増大することによって電荷再結合確率が増大し開放電圧が低下するためである。そこで錫の二価よりも酸化されやすいサマリウム二価イオンを添加し、添加量とキャリア密度、錫の二価、四価イオンの比、および太陽電池性能を調べた。サマリウムイオン(Sm2+)は錫の二価イオンよりも容易に酸化されサマリウム三価イオンになることが知られている。錫ペロブスカイト層に 1および5 % のSmI2を加えたところ、ペロブスカイト中にキャリア密度は 4.8 x 10(22) /cm3から1.2 x 10(19 )/cm3, 6.1 x 10(18) /cm3 とそれぞれ低下した。サマリウムイオンを添加することにより錫四価イオンが減少することをXPSで確認できた。2%のSmI2を加えたときに最大の効率が得られた。それ以上添加すると効率は低下した。2%のSnI2を加えたときには短絡電流が増加し、効率向上に貢献していた。シリーズ抵抗が一番低くなっていることから、ペロブスカイトヘテロ界面での抵抗が低下していると考えられた。サマリウムイオンを添加することにより粒界が小さくなり膜の平坦性が向上することが分かっており、膜が緻密化しピンホール密度が低下していることも効率向上に貢献していると考えられた。結論として錫ペロブスカイト太陽電池に使われる錫二価イオンよりも酸化されやすいレドックス種を添加することにより、錫二価イオンの酸化を防止しつつ、錫ペロブスカイト太陽電池中のキャリア密度を低下させることが可能となり、一般的な効率向上指針となることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は鉛フリーペロブスカイト太陽電池の高効率化指針の提案であり、より詳細には錫ペロブスカイトを用いた太陽電池の高効率化指針を提案することである。本研究結果で、錫ペロブスカイト層のキャリア密度を低下させるために、錫イオンよりも酸化されやすいサマリウムイオンを用いてキャリア密度が低下することを見出し、太陽電池の効率が向上することを実証することができた。本研究結果は結論として錫ペロブスカイト太陽電池に使われる錫二価イオンよりも酸化されやすいレドックス種を添加することにより、錫二価イオンの酸化を防止しつつ、錫ペロブスカイト太陽電池中のキャリア密度を低下させることが可能となり、一般的な効率向上指針となることを実証した。本結果は上記目的の指針提案の一つであり目標を順調に達成している。
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今後の研究の推進方策 |
鉛ペロブスカイト太陽電池ではABX3構造式のAサイトを変えてトレランスファクター1に近くすることによって太陽電池の効率を向上させている。錫ペロブスカイト太陽電池においても錫ペロブスカイト層の格子ひずみをXRDから実測し、格子ひずみと太陽電池性能の関係を議論する。これにより効率向上指針の提案を行う。
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